小犬座の星霊
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。自分ではしっかり笑ったつもりだが、上手く笑えているだろうか。
「あんまり待たせるなよ」
もっと気の利いた事が言えればよかったのに、今のニアにはこれが精いっぱいだった。
同時刻の妖精の尻尾。
「あれ?エバルー屋敷の一冊二十万Jの仕事……誰かに取られちゃった?」
「ええ……ナツがルーシィ誘って行くって」
「あーあ……迷ってたのになあ……」
依頼版の前で、青い髪の少女が首を傾げる。背の高い帽子を被った青年と何かのホルダーを両肩から下げた青年を連れた小柄な少女に通りすがったミラが言えば、がっくりと肩を落とした。
「レビィ……行かなくてよかったかもしれんぞい」
「あ!ギルドマスター」
と、その少女―――レビィに、カウンターに腰かけたマカロフが声をかける。
「その仕事…ちと面倒な事になってきた…たった今、依頼主から連絡があってのう」
「キャンセルですか?」
重ねた皿を抱えるミラが問う。
ギルドに入って来た依頼がキャンセルされる、という例はあまり珍しくない。早急に対処してほしいからと依頼主があちこちのギルドに依頼した結果他のギルドが片付けてしまっていたり、こちらが受ける前に依頼主の方で何とかなった場合だったり、何か都合が合わなかったり、その理由は様々だ。
「いや…」
だが、今回の場合はそうではない。
にやりと笑ったマカロフが、特に驚いた様子もなく告げる。
「報酬を二百万Jに吊り上げる……だそうじゃ」
―――瞬間、ギルドがざわついた。
元々の報酬ですら不釣り合いとも思えた依頼に、二百万。文字として書いてしまえばただゼロが一つ増えるだけだが、そのゼロ一つがとんでもない差をつけてくる。
「十倍!!?」
「本一冊で二百万だと!!?」
「な…何故急にそんな……」
「討伐系並みの報酬じゃねえか……一体……どうなってんだよ……」
「ちィ……惜しい仕事逃がしたな」
「面白そうな事に……なってきたな」
一気にざわつくギルド、その一角。
窓際の席、テーブルに背を向ける形で座っていたグレイが、煙草を咥えたままにやりと笑った。
「馬車の乗り心地はいかがですか?ご主人様」
「……冥土が見える」
「ご主人様役はオイラだよ!!!」
「うるさいネコ!!!」
そんな事情も知らない彼等は、シロツメの街に向かっていく。
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