小犬座の星霊
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――――そして、今に至る。
「契約不履行よね、こんなの!!」
「って言われても、それはお前等の問題だろ。ギルド云々の事に赤の他人巻き込まれてもな……まあ、流石にナツの手も汚いと思うが」
「そうか?」
「汚いわよ!!!」
けろっと言ってのけたナツにルーシィが噛み付く。何度目か解らないやり取りに隠す事なく溜息を吐いて顔を上げると、きょとんとしたようにこちらを見るハッピーと目が合った。
「どうした?」
「あい。大した事じゃないけど、ちょっと意外だなーって。ニアの事だから怒ると思ってた。嫁入り前のコイツに何させる気だーとか何とか言って」
「あ、確かに。前にそれでグレイとロキ蹴っ飛ばしてたもんな」
ぎゃんぎゃん喚くルーシィを完全にスルーしたナツも言う。あの状況で見てたのかと少し驚きながら口を開く。こう聞かれるであろう事は想定済みなのだ。
「それでもギルドの仕事にオレが口を挟む訳にはいかないだろ。相手が相手だから何かあったら、とは思わなくもないが、それで対処するのはオレじゃなくてナツだ。オレの護衛期間はルーシィがギルドに入るまで。もう切れてる」
ひらりと手を振って、一人掛けのソファに座るルーシィの頭にぽんと手をやる。そのまま髪が乱れない程度に撫でると、ちらりと目線がこちらを向いた。
「不愉快だろうが頑張ってこい、愚痴なら聞いてやる。……こうやってオレを頼るのもそろそろ止めておかないと、オレがいなくなってから苦労するぞ」
そう言って手を離すと、ルーシィが少しだけ寂しそうな顔をした、気がした。離した手が戻りかけるのを何とか抑える。それでは意味がないと、小さく唇を噛みしめる。
瞬きを一つした時には、既に吹っ切ったように笑っていた。
「…そうね。あたしだって妖精の尻尾の魔導士だもの、ぐちぐち言ってないで頑張るしかないわよね!!!」
「その意気その意気。頑張れ」
「うん!!!…あ、でも」
途切れかけた勢いに首を傾げると、拳を握ったルーシィが少し照れたように笑う。
「ギルドに入って初めての仕事だし、帰って来たら話しに来てもいい…かな。愚痴とか、こんな事があったよ、とか」
「……それまでマグノリアを離れるな、と」
「だ、大丈夫よ!!すぐ帰って来るから、ねっ」
どちらにせよ、まだもう少しマグノリアに滞在する予定なのだが、言わないでおく。具体的な日数を口にしてしまうより、気づかれないうちにひっそりと次の街に移動しようと決めた。
――――ギルドに加入する、という可能性をゼロにした訳ではない。けれど、一にも満たない可能性を選択肢にするのは、どうにも恐ろしかった。忘れるなよ、と誰かがそっと囁く。
今すぐにでも蹲ってしまいたくなる衝動を必死に抑える
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