小犬座の星霊
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。洒落ではない。
変な奴だの残忍だの言いながらも認めてくれたって事かしら、とルーシィが少し浮かれていた時だった。
……一応言っておくと、確かに、チームを組もうと誘ってくれたのは嬉しかった。それは嘘偽りなく本当の事だ。だが、だからといって納得出来る話ではない。それはそれ、これはこれなのである。
「早速仕事行くぞ!!ほら!!!もう決めてあるんだ―――!!!」
「もう、せっかちなんだからあ〜」
ばん、とナツが依頼書をテーブルに叩き付けた。少し色褪せたそれを手に取って、並ぶ情報に目を落とす。
「シロツメの街かあ……聞いた事あるような、ないような…」
あちこち旅をしていたらしいニアなら知っているだろうか、と思いながら目線を下へ。自分の髭を引っ張るふくよかな男性の写真の下、強調するように一際大きく書かれた六桁の数字に、思わず目を見開いていた。
「うっそ!!!エバルー公爵って人の屋敷から一冊の本を取って来るだけで……二十万J!!!?」
「な!!オイシー仕事だろ?」
美味しいどころの話ではない。本を取って来るだけなら危険な要素もないし、それで二十万はかなり大きいはずだ。依頼に対する報酬の相場はまだよく解らないが、それにしたってちょっと怪しくなるくらいいい話である。
初仕事から良案件、これなら討伐系でもないし失敗する事もない……そう思って、依頼書の一番下に目をやって、気づく。
「……あら?あらららららら…!!!?」
大きく書かれた報酬六桁の下に、三行ほど。
上にある写真の、髭を引っ張り舌を出した男性がエバルー公爵である事。その侯爵が女好きで、スケベで、変態である事。
そして最後に、ただいま金髪のメイドを募集している、との事。
「ルーシィ、金髪だもんな」
「だね!!メイドの格好で忍び込んでもらおーよ」
鈍い動きで振り返れば、後ろで二人がそんな話をしていて。
三人で仕事で、女性はルーシィのみ。しかも募集されている条件にぴったり合う金髪で、エバルー公爵とやらは女好きでスケベで変態というロクでもなさ。
「アンタ達、最初から……」
家に来たのも、チームを組もうと言い出したのも。
全部全部、この依頼にルーシィを連れていく為だったのだ。
「ハメられた―――――っ!!!!」
「星霊魔導士は契約を大切にしてるのかあ、偉いなあ」
「ひでえ―――――っ!!!」
ニヤニヤとナツが笑う。作戦成功と言わんばかりの態度に腹が立った。
「騙したな!!サイテ―――――!!!!」
「さあ行くぞ、ルーシィ」
「メイドなんてイヤよ〜っ!!!」
「少しは練習しとけよ。ホレ…ハッピーに言ってみろ、「ご主人様」って」
「ネコにはイヤ!!!!」
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