肉の日メニュー争奪戦・3
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「んにゃっ!?ななな、那智姉!それは黙っててって……」
「『あの子をディナーデートに誘ったのに断られちゃったぁ〜!私、飽きられちゃったのかなぁ?』だったか?」
「んにゃあああぁぁぁぁ!」
那智が繰り出したモノマネに、足柄は真っ赤になって悶絶している。どうやら、彼氏と2人で来ようとしていたらしい。しかし、足柄をここまで骨抜きにするとは……中々のやり手のようだ。そして那智よ、お前絶対妹に妬いてるだろ、羨ましくて。
「ま、何にせよ御馳走様ってトコだな、うん」
さて、時刻は午後8時。用意していたビーフストロガノフは100人前を綺麗に売り切って、残るは後片付けという状況。しかし俺はキッチンに立たずにカウンターに腰掛け、人を待っている。服装もいつものラフな格好ではなく、黒のタキシードで。
「ハーイ、お待たせしましたか?」
「馬鹿言え、女が着飾るのに時間は掛かるモンだ。その位待てにゃあ男が廃るぜ」
やって来たのは正妻でもある金剛。しかしその出で立ちはいつもの改造巫女服ではなく、艶やかなイブニングドレスだ。営業時間は肉の日メニューが無くなった時点で終了なので、ここからは特別な夫婦の時間だ。
「早霜、頼む」
「了解です」
早霜に盛り付けを任せて、嫁と会話を楽しむ。中々2人だけの時間が取れないからな。こういう短時間のコミュニケーションも重要だ。
「どうぞ、ビーフストロガノフです」
「Oh!今月も美味しそうですネー!」
「当然だ、酒も頼むぞ」
そう言って早霜に錨の形を象った鍵を手渡す。キッチンのとある場所に設置された鍵穴に差し込んで回すと、俺の秘蔵の酒蔵が姿を現す。ここには店にも出していないような貴重な酒がゴロゴロ唸っている。早霜にチョイスを任せて、金剛の姿を褒める。
「しかし、毎月気合い入ってるよなぁ」
「ンフフー、そりゃdarlingとのディナーデートですから?気合いMAXデース!」
そう。肉の日の営業が終わってからは金剛との水入らずのディナーデートへと洒落込む。実は100人前ではなく102人前仕込んでいるので、俺達2人の分が無いという事は無いのだが、それは製作者と発案者の特権、という事でひとつ。
「……では提督、ごゆっくり」
空気の読めるアシスタントは、赤ワインをグラスに注いだら退散してくれる。さぁ、楽しもうか。
「金剛に」
「darlingに」
「「乾杯」」
2人だけの店内に、グラスのぶつかる音が響いた。
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