肉の日メニュー争奪戦・3
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宮が『何言ってだコイツ』という顔でこちらを見てくる。
「提督、申し上げにくいのですが」
「フォンドヴォーから手作りする料理を趣味だと断じる人はいないと思われますが?」
「……そういうモンかねぇ、俺ぁ割と凝り性だからなぁ」
なので、そこからは伊良湖から質問攻めにされた。ちなみにフォンドヴォーはレトルトパウチで市販されてるから、自作する必要は無いぞ、とも伝えておいた。
遅めの昼食でスタミナを補充した3人は、足取りも軽く自分達の戦場へと戻っていった。そこからはほぼ客足は途絶える……と言っても、定時組の仕事が終わる午後5時までの話だが。それまで俺は椅子に腰掛け、うつらうつらと船を漕ぐ。
「店長、起きて下さい。そろそろお客様が来る時間です」
「……ん、おぉ。もうそんな時間か?悪いな早霜」
肉の日の夜の部の始まりを告げるのは、決まって早霜だ。遠征で居なければどうしようも無いが、業務終了5分前位には店に来て、大概寝ている俺を起こしてくれる。全く、良くできたアシスタントだぜ。
行儀は悪いが、キッチンの流し台で冷水をジャブジャブ使って顔を洗う。顔を拭き、眠気を飛ばせば準備は完了だ。
「料理の残りは20人分も無い。短い営業にはなると思うが、宜しく頼む」
「はい」
そんな短いやり取りを終え、俺達は仕事終わりの飲兵衛達を出迎える。肉の日メニューの料理で一杯。ウチの飲兵衛共には何とも魅力的な話だろうが、それなりのリスクが伴う行為だ。非番の奴以外は日中の営業では酒を出さない。飲みたいと思ったら昼間の営業中には食べられない。しかし夜に来たら無くなっていた、なんて可能性は高い。でも肉の日メニューは食べたい……と、何とも究極的な選択を迫られるのだ。それでも尚、ギャンブル的に『肉の日メニューは夜しか食べない』なんて自分ルールを作っている奴もいるのだが。
「いや〜、今月はツイてたわねぇ!」
「全くだ。ここの所私は3ヶ月連続でありついていなかったからな」
「私は今月も逃したら半年よ?半年!でも良かったわぁ♪」
ワインとウィスキー片手に料理を楽しんでいる那智と足柄も、『肉の日メニューは夜』というルールを課している連中の一部だ。残る面子は……まぁ、ウチの常連でもある飲兵衛達を想像してもらえば大体あってる。
「おいおい良いのか?可愛い彼氏が泣くぞ?」
俺が足柄をそう言って茶化すと、
「良いのよ、今日はあの子先輩達と飲みに行くって言ってたから」
サラリとそう言ってのけて流された。どうやら交際は順調らしいな。相談されてから少し気にかけたりはしていたのだが問題は無さそうだ。
「お?随分としおらしいじゃないか。私の所に泣きついて来たのは誰だったかな?」
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