125部分:雨の中でその二
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雨の中でその二
「どうやら思っていた以上に怖ろしい相手のようですね」
アズベルが額の汗を手の甲で拭きながら言った。
「ああ。だが負けられない」
アーサーが左手に炎を、アミッドが右手に雷を宿らせた。炎が雨を蒸発させシュウシュウと音を立て雷がバチバチと鳴っている。
「やらせんっ!」
馬上のオーヴァが至近で雷をデルムッドに連続で放つ。デルムッドはそれを驚異的な身のこなしでかわす。
ムハマドとダルシンの銀の槍が鈍く激しい音を立てぶつかり合う。それは幾十と繰り返される。
他の将達も同じだった。マリータとラルゴが、アサエロとオルトフが、フィンとリストが、オーシンとバルダックが、フィーとパウルスが、ミランダとブルックが、リフィスとニカラフが、トリスタンとパルマンが、ハルヴァンとウォルフが、ヨハルヴァとバラートが、ロナンとフラウスが、シヴァとザオムがそれぞれ激しい死闘の中にあった。とりわけ岸の船団の甲板上での戦いは凄まじいものであった。
甲板の上で両軍の将兵が刃を交えている。大型の船の上でフレッドはラインハルトの副官であるミュラーと一騎打ちを繰り広げている。
その隣の旗艦とおぼしき一際大きな船の上で二人はいた。豪雨の中二人は無言で互いを見ている。
「まさか敵味方に別れて剣を交えることになるとはな」
まずラインハルトが口を開いた。
「兄上、私は・・・・・・」
オルエンが兄に対し何かを言おうとする。だがラインハルトはそれに対し首を横に振った。
「良い。御前の言いたい事も考えも解かっているつもりだ。何しろ血を分けたたった二人の兄妹だからな」
「・・・・・・・・・」
「御前は自分の思うままに道を歩めばいい。それが御前の騎士としての生き方なのだからな」
「兄上・・・・・・」
ラインハルトは腰から剣を抜いた。
「だが私にも私が信じ歩む騎士道がある。その為に御前と剣を交える事になろうとな」
オルエンも腰から剣を抜く。火花と水飛沫が舞い散り銀の光が無数の雨の鏡を照らす。
両軍の将達が互いの軍の威信と存亡をかけ死闘を演じていたその時コノート城へ向けて急進する部隊があった。
「さあ急ぎましょう」
サイアスが先導を務めている。
「あたし達がブルーム王を倒しに行ってあんたとファバルが書庫へ行くのね」
ラクチェがサイアスに聞いた。
「はい、お任せ下さい」
城門が見えてきた。フリージ兵達が守りを固め城門は閉ざされている。
「よし、一気に行く?」
スカサハが大剣を抜こうとする。
「おい、俺に出番をくれよ」
ファバルがイチイバルを手に前に出て来た。
「えっ、幾ら何でも無理よ」
雨で視界は極めて悪く距離もかなり開いている。
「まあ良いから良いから」
余裕の笑みを浮かべながら矢をつがえる。
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