第三十八話 夏になってその十七
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「何かね」
「本当にたまたまですよ、ストーカーとかしてないですから」
「その割に毎日会ってない?」
「それはたまたまですよ、そもそも」
阿波野君が言うにはです。
「僕と先輩じゃ校舎違いますよ」
「それもそうね」
「学年が違いますから」
私は三年生で阿波野君は一年生です、その割に随分と馴れ馴れしいですけれど。
「残念ですが」
「何でそこで残念なのよ」
「まあまあ。とにかくですね」
阿波野君の言葉は続きます。
「本当にいつもたまたまですよ、ただ」
「ただ?」
「眼鏡姿の先輩もです」
「たまたま見たの」
「はい、ラッキーでした」
「ラッキーじゃないわよ」
私は主観から答えました。
「全く、よ」
「あっ、そうですか」
「そうよ、まあ眼鏡位はね」
考えなおしました、というか本当にそれ位ならでした。
「別に見られてもいいわね」
「そうそう、可愛かったですよ」
「可愛いって何よ」
そこは言い返しました。
「私阿波野君より二つ上よ」
「だからですか」
「可愛いはないでしょ」
「あれっ、アイドルの人でも年上でも」
「私はアイドルじゃないでしょ」
普通の学生です。
「そこでどうしてそうなるのよ」
「駄目ですか?」
「何で年上で可愛いなのよ」
「素直にこう思ったんですけれど」
「だからそれはね」
また阿波野君に言いました。
「ちょっと違うんじゃ」
「それじゃあ美少女とか奇麗とか」
「そんなこと言われたことないし」
一度もです、生まれてから。
「というか美少女って」
「あれっ、嫌ですか?」
「お世辞でもよ」
自分でも気恥ずかしい顔になっているのがわかりました、そのうえで阿波野君に言いました。
「あまりね」
「けれど本当にですよ」
「美少女なの?私が」
「AKBに入るか声優さんになったら」
阿波野君は私にこんなことも言いました。
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