Side Story
少女怪盗と仮面の神父 40
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とぐったりとうんざりを合わせた顔で渋々虜囚を解放し、空いた両手のひらを耳横へ持ち上げた。
その手のひらを確認し、ミートリッテは申し訳なさそうに苦笑う。
「正直、こんなにあっさり引っ掛かってくれるとは思わなかったんですが。色仕掛け認定、ありがとうございます。大体は貴族の屋敷周辺ですかね? お金と地位は多種多様な人間を呼び寄せるみたいで、散歩するだけでも大変勉強になります」
「南方領貴族の情操教育を一から叩き直させてやる。絶対だ」
「いたいけな女子供には心強い意気込み。素敵です」
「嬉しくない」
「弱者保護の面で期待も込めて誉めたんだけどな。残念。とりあえず、三歩下がってくれますか? みんなも、私に近寄らないで。少しでも動いたら、切るよ」
ベルヘンス卿から掠め取った果物ナイフ程度の小さな短剣をミートリッテ自身の首に当て行いながら、騎士達を牽制。
背後に三歩分の足音を聞き届けてから、前へ進む。
「ミートリッテ、なにを…… っ??」
「ハウィスも動かないで。……ごめん」
ハウィス達には、ウェミアの首切り自殺を目の当たりにした過去がある。
首元に凶器を添わせる女の姿など、恐怖以外の何物でもないだろう。
ギチッと音を立てて石像と化したハウィスを横目に。
それでも刃は皮膚に当てたまま、離さない。
「……なんのつもり?」
怪訝な表情を浮かべるイオーネの斜め前。
王子とハウィスの間にしゃがみ込み。
アルフィンの手首を掴んでいた、イオーネの左手を見て……
にっこり笑う。
「私、シャムロックなの。同時に、山猫とも呼ばれてるわ」
「…………?」
「いろいろ調べたみたいだけど、これは知ってるかなあ? シャムロックの実態はブルーローズの模倣犯だったのよ。ブルーローズと違って単体だし、手段はいろいろ変えてたけどね。だからこそ、彼らに比べると出来が悪くて根性も汚い。高潔な青い薔薇達は過ちを知り、諦めと絶望を学んだ。でも、下賤な山猫にしてみれば、知ったこっちゃないのよ。そんなモノ」
にやり。
イタズラっぽく歪む唇を見て、イオーネの瞳がやや大きくなった。
「……ハウィスを護る為に、お前が私を殺す、という話かしら?」
「いいえ。欲張りな泥棒猫は何一つ諦めない。と言ったの。シャムロックの最後の獲物は、『あなた』。バーデルからイオーネを盗んで、アルフィンの笑顔を取り戻す」
「は?」
「「「は?」」」
イオーネの呆れ声を拾い、騎士達の間抜けな声が唱和する。
「ついに頭がおかしくなった? 私をこの場で殺さない限り、バーデルが」
「うん。時間が無いのは確かだと思うし、サクサク行くね。
まずはエルーラン殿下。向き合いもせずに、非礼ながら
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