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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
完璧 イチゴタルト
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落とせるのだろうか? あれは反乱軍が誇る防衛兵器なのだ、そんな簡単に落とせるとは思えない……。
「始まるぞ」
誰かが作戦の開始を指摘した。スクリーン上ではビッテンフェルト艦隊が移動しつつある。しかし、妙だ、取り囲むだけで攻撃するようには見えない。第一首飾りからはかなり距離がある。おまけに艦隊は少しも近づこうとはしない。
「なんだ、あれは」
ビッテンフェルト艦隊の後方から白い大きな何かが現れた。戦艦より大きいだろう。それが徐々に首飾りに向かって動きつつある。
「おい、拡大できないか」
スクリーンが作動し、あの物体を拡大投影した。あれは、氷のように見えるが、そうなのか? 思わず声が出た。
「あれは、氷か?」
「……」
誰も疑問に答えない。皆顔を見合わせるだけだ。徐々に氷らしきものがスピードをあげていく。あれを首飾りにぶつけようというのだろうか。しかし、それで壊せるのだろうか?
「あれがぶつかったら衛星は……」
誰かが呟いた、ロイエンタールだろうか? 皆不安そうな顔をしている。
「首飾りが攻撃を始めたぞ」
レーザー砲が物体を襲う。効かない! 水蒸気らしきものが上がった。やはり氷か……。首飾りからの攻撃は水蒸気を上げるだけで何の効果も無い……。氷はさらにスピードを上げていく……。
「ぶつかるぞ」
衝突した。氷は砕けた、衛星も砕けている。二つとも破片となり美しくきらめいている。アルテミスの首飾りは砕けた……。
「全滅だな」
「ああ、全滅だ」
何処か疲れたような声がした。ミッターマイヤーとロイエンタールだろう。
「イチゴタルトを作るよりも容易いか。確かにそんな感じだな、もっとも俺は作ったことは無いが」
ケンプ提督は何処と無く釈然としないといった表情だ。気持ちはわかる、アルテミスの首飾りを落としたのだ、本当ならもっと昂揚感に包まれてもいい。だがそれが欠片も無い。この空しさはなんだろう。
「イチゴタルトを作るよりも容易い、と言うよりもイチゴタルトを作れなくても落とせる、そういうことだな」
何処か冷笑を含んだ口調だった。
「どういう意味だ、ロイエンタール」
「どんな馬鹿でも出来ると言うことだ、ミッターマイヤー」
「……」
「用意するのは氷だけだ。低コスト、ハイリターン、おまけに誰にでも出来る容易さ。完璧だな」
会議室にロイエンタールの声が流れた。誰も反論しなかった、もっとも賛成する声も上がらなかった。疲れた、妙に疲れた。
帝国暦 487年 5月 3日 オーディン ローエングラム元帥府 オスカー・フォン・ロイエンタール
トサカ頭が帰ってきた。損害は無し、マクシミリアン・フォン・カストロプは降伏、完璧な勝利だった。ローエングラム伯
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