第三十六話 原因はこの際問題ではありません。要はどうやってケリをつけるかです。
[9/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
抜されたのよ。それに大丈夫。今回は基地航空隊が出撃して掩護に当たっているし。」
紀伊は二人を安心させるように言ったが、ちょっと引っかかるものを覚えていないわけではなかった。作戦の大方針として、できる限り大兵力をもってのぞみ、自部隊に損害が出ないように進めていくということではなかったか。いくら第一機動艦隊が弱体化しているだろうとはいえ、また、基地航空隊が付いていくとはいえ、それを一個艦隊で沈めに行くというのは過信・慢心の表れではないだろうか。
だが――。
第一機動艦隊にとどめを刺すべく出撃した扶桑たちはそうは思っていなかった。彼女たちの士気は旺盛で、横須賀鎮守府を演習当日の0900に出航した。偵察機妖精からの報告では、第一機動艦隊は戦力のほとんどを失い、わずかに空母3隻とその護衛艦隊のみの存在になっていた。これには、先の紀伊たちの奮闘と、レーダー搭載深海棲艦を撃破すべく飛び立った航空隊の攻撃などが影響している。放置しておいても、害はないとみなしてもよかった。
しかし、第一機動艦隊は後方のミッドウェー本島に帰還して体勢を立て直そうという動きを見せていると偵察機から連絡が入ったため、軍令部の意図が変わった。これを捕捉し、撃滅してミッドウェー本島攻略作戦の足掛かりにしようというのがヤマト軍令部の狙いだった。
「残った空母すべてを撃沈するのが今回の目的よ。」
扶桑たちに訓令を与えた葵は会議室でそう言った。
「敵の位置は既に割れているわ。沖ノ島から東に100キロ、既に基地航空隊が発進、敵の足を止めているとの報告が入っているわ。高速空母と言えども速力は落ちているはずよ。扶桑。」
「はい。」
「あなたが全艦隊の指揮を執りなさい。速やかに出撃し、敵機動部隊空母をすべて葬り去り、私たちのミッドウェー本島攻略作戦の足掛かりとすること。」
「わかりました。かならず。」
扶桑はそう葵の前で明言した。皆も声こそ出さなかったが、思いは同じだった。特に山城、そして大鳳はこれまで実戦に投入されてきた機会が少ないだけに、手負いとはいえあの横須賀鎮守府を悩ませてきた敵の精鋭部隊と一戦交えることができ、しかもそれを撃滅する任務を与えられたことを喜んでいた。
その扶桑艦隊が第一機動艦隊と接触したのは1600。既に日が傾きかけ、茜色の空が広がりつつある頃だった。
敵は空母三隻、それを輪形陣で重巡戦隊以下が護衛し、後方を戦艦4隻が護衛する形をとりながら東進している。だが、かつてヤマトを窮地に陥れた精鋭部隊の面影はない。どの深海棲艦も扶桑たちを見ると飛び上るようにして金属質の叫び声のような物を上げ、速力を上げにかかった。それを上空から基地航空隊が追撃する。早くも護衛の戦艦が一隻、大爆発を起こして四散し、沈んでいくのが見えた。
「まさに斜陽ですね。でも、それは私たちで
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ