第三十六話 原因はこの際問題ではありません。要はどうやってケリをつけるかです。
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敵の陣形を見出しめることも課題の一つだと思いますわ。」
「それと、各艦隊の特性をもっともっと活かさなくっちゃ、ですね。今日は結局水雷戦隊お得意の雷撃戦の機会はあまりなかったわけだし。それを作れるように私たちが道を切り開かなくちゃいけないんだって思いました。」
「フン。」
尾張は鼻を鳴らしたっきり、黙ってお茶を飲んでいた。何も言わなかったところを見ると、紀伊や近江、そして讃岐の感想に反対でもなかったらしい。
「これで、やるべきことはやったわけね。」
紀伊はほっと息を吐いた。後は海戦当日まで各員は休息を与えられている。各々練習などをすることになるだろうが、公の予定としては海戦当日の召集までは何もない。
不意に、全身が身震いした。緊張感、というのだろうか。今までは演習等やることがあって気が紛れたのだが、すべて終わった今、自分とミッドウェー本島を遮るものは何もない。何もなければないほど、敵、そして攻略しなくてはならないミッドウェー本島の大きさ、重圧がひしひしと自分に伝わってくる。それを感じて今身震いしている。紀伊はそんな状態になっていた。
だが、ついにここまでやってきたのだ。ミッドウェー本島を攻略すれば、ノース・ステイトへの道がぐっと近くなる。その重要な岐路にまでやってきたのだ。
気が付くと、姉妹たちが皆こちらを見ている。紀伊はごまかすように軽く首を振ってお茶を飲んだ。最後の言葉など今ここで発するべきではない。それはもっともっと後になってからでいい。勇み足になってしまうからだ。
「そういえば、今日は扶桑さん、山城さんがいなかったですわね。」
ふと、近江がお茶を飲む手を止めて言った。
「大鳳さんもいなかったです。麻耶さんも鳥海さんも、阿賀野さん、酒匂さん、朝霜さん、朝雲さん、山雲さん、高波さんも。」
讃岐も言う。
「フン、知らなかったのね。もう少し情報を収集しなくちゃ駄目よ。彼女たちは出撃中。演習に出られるはずもないわ。」
尾張が二人をじろと見ながら言う。
「出撃中?」
二姉妹が一斉に尾張を見つめた。
「例の第一機動艦隊にとどめを刺しに行ったのよ。あれは私たちとミッドウェー本島を遮る最大の障害だから。」
「たった一個艦隊で、ですか?ちょっと無謀すぎません!?」
愕然とする讃岐に、紀伊は補足説明をした。
「先日私たちが出撃した際に、艦載機の大部分を失っているし、ル級フラッグシップも撃破しているわ。戦力は大幅に弱体化しているの。レーダー搭載深海棲艦も撃破して、迎撃能力も大幅に落ちているわ。今回はそれを試すという意味合いがあるの。」
「でも、ちょっと危なそうな・・・・。」
「例のレーダー搭載深海棲艦の破壊作戦を除けば、ここのところ扶桑さんも山城さんも出撃していなかったし。大鳳さんも同じよ。士気の高揚という意味合いで選
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