第三十六話 原因はこの際問題ではありません。要はどうやってケリをつけるかです。
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海棲艦について調べ始めていた。彼女の机の上に散らかっている資料はそのたぐいのものである。葵は新聞記事の切り抜きから、軍令部で第一級機密事項に抵触するDVD−Rまでも入手し、資料をかき集めていた。
「・・・・・・・。」
手近の資料を取り上げて、パラパラとめくり始める。それはもっとも古い記録、すなわち最初にヤマトが深海棲艦と接触した時の記録であった。場所は沖ノ島海域。具体的な緯度・経度などは塗りつぶされているが(おそらく軍資料部の中に厳重に保管されている大本があるのだろうと葵は思った。)その時の邂逅の様子は詳細に記録されていた。
ヤマトの訓練中のイージス艦が2隻、単縦陣形で東進するところを、不意に右2時方向から染みのような艦影が現れ、10時方向に横切ろうとしていたのを発見した、とある。
その後双方ともに砲火を交え、深海棲艦のうち一隻を撃沈したものの、イージス艦の1隻は大破撃沈、一隻は集中砲撃をかいくぐって、横須賀に逃げ延びたとある。遼艦を救う暇もなかったそうだ。それほどすさまじい攻撃だったのだろう。
「・・・・・・?」
何の気なしにページをめくっていた葵の手が止まった。そして、もう一度気になった個所に戻ってみる。
「これ、ちょっと待って・・・・!」
我ガ方前部主砲門指向シ、発砲ス。の文字が飛び込んできた。それ以前の記録では発砲という文字も攻撃という文字も一切出てこない。つまり、深海棲艦側からの発砲記録は、ないということになる。
「最初に攻撃したのは、こっち側だってこと・・・・!?」
葵の胸はざわめいた。沖ノ島海域といっても、ヤマトの領海はそこから12カイリ程度にとどまる。
仮に、沖ノ島海域とあるところが実は公海だったとすれば、どうなるか。
公海法上、明白な攻撃を受けた等の緊急避難的措置を除き、戦闘は禁じられている。こちら側が攻撃を仕掛けたのであれば明白な違法行為だ。
それを隠すために、戦闘が行われた海域を伏せてあるのだとしたら――。
そこまで考えて葵は首を振った。
「バカよね。深海棲艦なんて未知の存在だもの。どっかの国の艦じゃないもの。そんな存在伊公海法を適用すること自体間違ってるわ。でも・・・・。」
でも、と割り切れない思いでいるのは、向こうが何もしていない状態でこちらが一方的に戦端を開いたのであれば、相手がそれに対しての報復措置を行った、というだけのことになる。
沖ノ島攻略作戦において、沖ノ島棲姫が言った言葉、葵も報告を受けていた。かの深海棲艦は自分たちが被害者のような言動を放ったという。
『ソレハ、報復トシテ当然ノ事――。』
『何故貴様ラハ我々ヲセメル?』
その時は深海棲艦側の独りよがりだと思っていたが、もしそれが事実だとするならば――。
だが、と葵は思う。起点がどちらが原因だった
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