第三十六話 原因はこの際問題ではありません。要はどうやってケリをつけるかです。
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蹴立てて追っていくのを、観戦用として派遣されていたイージス戦艦艦上から葵は双眼鏡を構えながら見ていた。
「――いい意味で枷が取れたのね。どこか他の艦娘や姉に対して思うところがあったのだろうけれど、自分は自分だっていうことにようやく気が付いたんだと思うわ。ま、元気がいいのは結構だけれど、あまり変な方向に行かないでほしいってところね。」
葵は手元の冊子を取り上げて、パラパラ気のなさそうにめくりながら、
「アンタの方はどうなの?マリアナ諸島の方。へぇ?やっぱり暑いんだ。いいんじゃない?日頃部屋でダラダラしてばっかなんだからこういう時には海で泳ぐなりなんなりして体を鍛えなさいよ。え?クラゲ?何言ってるの。そんなもんよけて泳げばいいじゃない。無理?ははっ、まぁそうか、そうよね。」
葵が楽しそうに笑う。呉鎮守府の提督で、現在マリアナ諸島泊地司令官と話しているときの葵は、とても楽しそうだ。
「ま、そういうわけでさ、いよいよこっちも正念場に近づいてきたってわけ。第一機動艦隊はほぼ壊滅状態だし、道を遮る存在はなくなったわけだし。ホント、いよいよって感じよね。」
ほうっと何とも言えない長い吐息が吐き出された。
「ここまで長かったよね。お互いよく生きていたじゃない。まぁ、私たちって陸上勤務が多いから、こんなこというと艦娘たちに怒られるだろうけれど。戦場で身をすり減らしているのはあの子たちだものね。・・・・うん、ありがと。色々心配してくれてさ。まぁ、そんな程度じゃ私の貸しは返せてないけれど。この前の新鋭艦娘の派遣だって貸しなんだからね。今度会った時はランチ奢りなさいよ。そうね、軍令部食堂のAランチで勘弁してあげるから。え?何言ってんの?は!?体重!?三段式甲板!?バッカじゃないの!!そんなの大丈夫に決まってるでしょ、失礼な!!!」
叩き付けるように通信を切った葵は、怒りの吐息を吐き出すと、デスクに戻ってきた。
レーダー搭載深海棲艦を撃破し、東進への障害を取り除いたヤマトは、いよいよミッドウェー本島攻略作戦に乗り出すこととなった。葵が自室で話しているこの時には、すでに正式なオーダーは決定され、編成も完了。艦娘たちには明日から1日間の休息が与えられている。その間は葵が一手に事務を引き受けていた。その傍ら彼女は零式水上偵察機を八方に飛ばし、深海棲艦艦隊の根拠地を探ることに腐心していた。
彼らはいったいどこから来るのだろう?まさか深海からぽっとあぶくのように湧き出てくるわけでもあるまい。ヤマトは深海棲艦に襲われた数年前からずっと彼らの所在や正体を探ってきたが、どこから来ているのか皆目見当もつかなかった。
最近の海戦を艦娘たちにゆだねられるようになって、また、ミッドウェー本島攻略作戦の作戦概要も整ったこともあって、比較的暇になっていた葵はもう一度深
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