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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第三十五話 扇の要
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レーダー搭載深海棲艦をすべて破壊すべく、横須賀から沖ノ島を経て、尾張、近江、川内、吹雪、浜風、浦風、村雨の挺身隊が出撃したのは、秋の払暁の日だった。既に主力艦隊は鎮守府近海に潜むレーダー搭載深海棲艦の撃破及び、尾張たちの支援目的の陽動のため太平洋上に出撃し、北方に潜むレーダー搭載艦の撃破に、大湊鎮守府の艦娘たちと共同で撃破に向かうべく、飛龍、蒼龍をはじめとする第二航空戦隊とその護衛艦隊が向かっている。

 最も危険なのは、敵の勢力圏内の真っただ中にあるレーダー搭載深海棲艦を撃破に向かう尾張たちだろう。今回は航空支援も期待できない。文字通り自分たちの力だけで血路を開かなくてはならない。
 何よりも、一番の問題はレーダー搭載深海棲艦の正確な場所がまだ判別できていない事である。これについては、軍令部は零式水上偵察機を広範囲に散開させて対処することにした。
なるほど、半径最大1500キロを巡航速度で偵察可能な彼らなら、レーダー搭載深海棲艦を探索できなくはない。だが、それもレーダーではなく目視によるものであったから、どこまで見つけられるかは未知数だった。
 横須賀鎮守府を出立した尾張は冷静にこれらの問題点を分析していたが、怯みはしなかった。姉の開いた道は妹である自分が開くという言葉を言い放った時、一様に皆が驚いていた。尾張自身自分では意外なことを言ったつもりは全くない。あの洋上で紀伊、そして阿賀野たちに助けられてから、自分をより冷静に見つめなおすことができ、それが周りに対する冷静な評価につながっていった、それだけだという思いでいる。
 もっとも、尾張の心を深く掘り下げていけば、紀伊にたいして少しだが認めつつある思いを見つけることができたかもしれない。それは本人もまだ自覚していない事ではあったが。
 

沖ノ島泊地を出立して1日が過ぎ、翌日の昼前の事だった。一同が航行をつづけながら携行してきたお握りやアンパンをほおばっていた時、尾張の電探に反応があった。
「前方、正面に深海棲艦の大部隊を確認!!」
同時に吹雪が叫んだ。彼女は単縦陣形の一番前を走っていたから、真っ先に深海棲艦を見つけられたのだ。
「数は?」
と、川内。
「待ってよ、今確認中だから・・・・。」
尾張は咥えかけたアンパンを鞄にしまうと、電探をなおも動かし続けた。
「戦艦3・・・重巡3・・・空母1・・・軽巡5・・・駆逐艦10・・・お出迎えね。完全に半円陣形を敷いてこっちを待ち構えているわ。バレたわね。」
「冷静になっている場合じゃないよ。どうするの?」
「フン。準備もしないで突撃するようなどこかの戦艦とは違うわ、私は。・・・近江。」
と、尾張は妹を顧みて、
「例の兵器を使うわよ。」
「ここでいきなりですか?尾張姉様。」
「敵の布陣に穴をあけるわ。大方ここに配置
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