第三十五話 扇の要
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しい目は見落とさなかった。しっかりと見つめていた。
「尾張姉様・・・あの3人は私たちの道を切り開こうとしていますわ。」
「違うわよ。」
スノーボードに乗っているときのように、左半身を前にして、敵との距離を正確に測りながら、尾張は言った。尾張、そして近江の3連装主砲が仰角を徐々に低くしていく。それだけ距離が縮まっているということだ。
「あの3人は3人。私たちは私たち。みんなそれぞれの道を切り開こうともがいているだけ。それだけよ。」
「尾張姉様・・・・。ええ、そうですわね!!」
「前方に敵艦載機隊!!対空戦用意!!」
無数の黒い点が白い雲をバックにした青い空一杯に展開し、こちらに突撃してきた。
「来ます!!」
前方の無数の点から一斉に火花が散ったように見えた。無数の機銃弾が二人の前後左右に降り注いでくる。
「エリート級の艦載機隊などたいしたことはないわ。全対空火器を全力射撃のままつっきるわよ!!」
二人は白波を蹴立てて艦載機の群れの真っただ中に突入していった。全速力で突っ込みながら応射する二人の対空砲火によって艦載機隊の動きがひるむ。さらに護衛の烈風隊が突撃し、敵を散らしていく。その中を二人は突撃、突破していった。
「近江、主砲、構え!!」
その瞬間、近江の全身に何とも言い難い高揚感があふれかえった。紀伊と会った時とはまた違うものだ。紀伊姉様はとても素晴らしい人だ。だが、今自分の隣にいる尾張姉様もまた敵に後ろを見せることなく、凛とした姿を敵にさらしている。味方をさげすんでばかりいた沖ノ島海戦の直前直後とは全く違う。
「はい!!」
二人は狙いを付けた。
「テェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
尾張が叫んだ。立て続けにとんだ主砲弾が前面を遮る戦艦ル級フラッグシップに命中して大爆発を起こし、破片をあたりにまきちらした。ついで接近してきた艦載機隊が敵のネ級をハチの巣にし、轟沈させた。それを埋めようと、戦艦ル級フラッグシップが封鎖線を構築しようとしている。その主砲が指向してこちらを向いてきた。
「防衛網に穴が開いた!!近江、次発装填!!」
「はい!!」
その時、戦艦ル級フラッグシップ群が一斉に砲撃を開始した。
「尾張姉様!!」
庇うように全面に進出した近江を巨弾の嵐が襲う。
「近江!!」
集中砲撃を受けた近江がよろめく。体は無事だったようだが、艤装が大破して使える主砲が2門だけになってしまっていた。
「近江!!くそっ!!これじゃ前回の海戦の讃岐や比叡と同じじゃない!!何やってるの!?」
「まだ、飛行甲板は大丈夫・・・です。それよりも、早く!!・・・・ッ!!」
近江が突き飛ばされてよろめく。尾張は近江を突き放すようにして前面に進出していた。もし、一瞬でも遅ければ、近江は敵砲弾に貫かれていただろう。
「今度こそは
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