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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第三十五話 扇の要
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声が全艦隊を貫いた。振り向いた一同の眼に艦載機隊が全速力を上げて追ってくるのが見える。その真下に無数の黒い点が見える。高速で動いているのは、おそらく軽巡以下の水雷戦隊だろう。どこかの空母機動部隊が急を聞きつけて後方から駆けつけてきたらしかった。
「川内。」
尾張が川内を向く。
「今の状況下では零式弾は使用できない。あれは、一つ扱い方を間違えれば自爆してしまう諸刃の剣よ。冷静に諸元を入力して使用しなくてはならないの。そんなものここでぶっ放して、砲塔内爆発で一緒に吹き飛んで死にたくはないでしょ?」
「役立たずの砲弾ね。」
「フン。」
尾張は鼻を鳴らした。
「砲弾が役立たずかどうかが問題じゃない。優秀な砲弾でも、使う人間が屑であれば役に立たない。逆に通常弾頭でも優れた人間なら局面を切り開く力に変えることができる。要はそれを使う側の器量が戦いを左右するの。あなたもそれくらいわかっているはず。違う?」
川内の顔に笑みが浮かんだ。
「あなたは変わったね。私が嬉しいと思う方向に。」
「あなたに望まれて変わったんじゃない。それに私は私。変わったつもりはないわ。」
「それでいいんじゃない。」
川内が主砲を構えた。
「私が道を切り開く。いえ、あなたの道を切り開く手伝いをすると言った方が正しいかな。紀伊型空母戦艦尾張。」
川内は尾張をじっと見た。
「これがあなたの本当の戦いの第一歩よ。しがらみに縛られないあなた自身の本当の力を発揮する戦い。それが、今!!」
応える代わりに尾張は速力を上げた。川内は後ろを振り向いて叫んだ。
「吹雪、浜風!!後ろは任せたよ!!吹雪、防空駆逐艦として、改二の力を見せてやって!!」
「はいっ!!」
吹雪はくるっと後ろを振り向く。後方全速航行からすさまじい弾幕射撃を追尾してくる敵艦載機隊に浴びせかける。その横で浜風も懸命に応射を開始した。吹雪の撃ち漏らした艦載機をピンポイント射撃で的確に撃破していく。
「村雨、浦風!!私と一緒に右翼から全速で突撃!!敵の防御陣形に穴をあける!!穴の開いた隙間から尾張、近江の主砲が敵を撃ち抜く!!」
「戦艦の主砲で、ですか?それなら私たちの方が――。」
「遠目で見ただけだけれど、アイツの装甲は厚い!!重巡クラスに匹敵するんだよ。近接戦闘の魚雷攻撃の手段は残っているけれど、それは最後の最後。私はあの二人を信じる。そのために道を切り開く!!」
村雨と浦風は顔を見合わせて・・・強く、うなずいた。
「了解じゃけぇ。でも、もしあかんかったときは、うちがしとめるけぇね!!」
「好きにしな。行くよ!!」
敵駆逐艦、重巡、そして戦艦が主砲を構え、そして、撃ち始めた。海面すれすれに飛んでくる主砲弾の雨を交わしながら3人は側面から砲撃を叩き付け、魚雷をぶっ放した。

その光景を尾張の青い美
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