第三十五話 扇の要
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「本気よ。冗談でこんなことができるわけないでしょ。」
「う〜〜〜!!流石に鳥肌立ってきちゃった。」
村雨が両腕で体を抱くようにした。
「大丈夫!きっと私たちは勝てるよ!!絶対勝って帰ってくるんだから!!」
吹雪が励ました。
「そうじゃけぇ!!うちらは絶対にこんなところでは沈まんからのぉ。」
「尾張姉様は冗談は言わないです。そして敵を過大評価もしていませんし、味方を過小評価もしません。すべてをありのままに冷静に分析して、たどり着いた結論は――。」
「前に、進むしかない・・・・ね。」
川内がつぶやく。そのつぶやきを尾張は耳にできたのか、ちらっと川内を見た。
「前に進むしかない。私たちには後ろに戻る道はない。こういうことわざを知っている?前門の虎後門の狼って。前門の虎を防いでいるときに後門から狼が侵入してくること。挟み撃ちよ。今の私たちとは少し意味は違うけれど、前後をふさがれているのであれば、私は戦って血路を開く道を取る。」
尾張は速力を増した。水煙がたばしり、白い長い航跡が尾を引いて流れ去っていく。
「近江、艦載機を発艦させるわよ。全力航行の中での艦載機発艦、できる?」
艦首を風上に向けている状態ではない、しかも全速航行のため、複雑な風圧が前後左右から吹き寄せ、体は平衡を保つことが難しい。
「尾張姉様、この状況ではやるしかないでしょう。もちろん、できますわ。」
フッと尾張の顔に一瞬笑みのようなものが走った。
「よし、構えて・・・・艦載機隊、発艦!!」
二人は乱気流ともいえる状況の中をバランスを保ちながら次々と十数機の艦載機隊をそれぞれ発艦させ、配置につかせた。
「見えました!!あの高い鉄塔のようなもの、間違いありません!!前方の距離4万!!」
吹雪が双眼鏡を構えながら叫んだ。
「主砲、発射、用意!!」
尾張が叫んだ。尾張と近江の3連装主砲が仰角を上げ、青空をにらむ。
「待って。敵がいる。レーダー搭載深海棲艦を囲むようにして前面に押し出してきた!」
川内が双眼鏡を構えながら注意を促す。
「陣容は・・・・戦艦ル級フラッグシップ3、空母ヲ級エリート1、重巡ネ級2、駆逐艦ハ級フラッグシップ3!!」
「たいしたことはないわね!!このまま突っ走る!!」
「ですが、その後方から続々と大部隊が!!左右からも戦艦、重巡部隊が接近してきています!!包囲されてる!?」
「前面の敵はともかく、左右の敵はまだ距離があるでしょ。奴らのお得意の戦法よ。囮として引き付けておいて、左右からそれを不意打ちするのは。ただし今回は裏目に出たわ。私たちの目的はたった一隻なのだから!!」
でも、と川内が声を上げる。
「敵の真っただ中に飛び込むつもり!?だったら、あの零式弾を放った方が――。」
「後ろです!!!」
最後尾の浜風のものすごい叫び
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