第三十五話 扇の要
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「私たちは東方に向かっているわ。傍から見れば前回の比叡たち同様、ミッドウェー本島攻略作戦のための偵察だとおもわれるでしょう。だから敵も私たちを攻撃していないのよ。どういう意図か知らないけれど。だからその隙に付け入ることは可能だと思ってるわ。川内。」
尾張は川内を見た。
「私の本心はそういうことよ。」
「・・・・ったく。」
川内は気まり悪そうにそっぽを向いたまま小さく、
「とんだ誤解を招く言い方、やめてくれない?」
その時、また別の零式水上偵察機が10時の方向から飛んでくるのが見えた。機はまたくるくると旋回しながらしきりに翼を左右に揺らしている。
「見つけたの!?」
尾張が鋭いまなざしで機を見上げた。機はそうだというように大きく翼を上下させると、もと来た方角に飛び去っていった。
「見つけたって!!やったじゃない!!」
村雨が喜んだ。
「とうとう見つけた・・・・。」
川内が息を吐き出した。最初の戦闘以外、敵は現れていない。だが、ここまでの旅は緊張の連続だった。戦闘行動よりも隠密行動の方が疲労するのは、その神経を絶えず張り詰めなくてはならないし、戦闘行動の時とは段違いの長い時間をその張り詰めたまま行動しなくてはならないところにある。
「ま、見つけたのは零式水上偵察機だけれど。」
と、尾張。
「とにかく道が開けたわ。さっさといってさっさと片を付けてさっさと帰りましょう。」
「あれ?また来たけぇ。」
浦風が空を指さした。
「忘れ物かのぅ。」
「まさか、方角が違うわ。そんなわけないでしょ。」
と、川内。一同が空を眩しそうに見上げる中を、今度は2時方向から飛んできた零式水上偵察機が不意に赤い煙を吐き出して宙に一文字を描いた。
滅多にないそのシグナルの意味を理解できない艦娘は一人もいない。そしてそのシグナルをできれば見たくはないと思っている艦娘は全員に違いなかった。
「全速航行!!」
尾張が不意に怒鳴った。一同はすさまじい水煙を巻き上げ、全速力で走りだした。
「ここにいたらすぐに敵の大艦隊と艦載機の大部隊がやってきて私たちはハチの巣にされる!!すぐに退却しなくちゃ!!一体何を考えているの!?」
川内が並走しながら尾張に怒鳴る。最大戦速で走っているので、怒鳴るように話さなければ、風圧で聞こえないのだ。
「ここにきて退却?冗談言わないで。せっかく目標が見つかったのに。」
「でもさっきチャンスは複数あるって言わなかった?」
「これが絶好のチャンスとなれば話は別よ。戦況は刻々変化するの。零式水上偵察機のおかげで、私たちは既に目標を発見できているのよ?逃しはしないわ。みんないい!?チャンスはこの一回だと思って!!たとえ敵がやってきても絶対に足を止めずに突っ走るわよ!!」
「本気ですか?」
と、浜風
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