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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第三十五話 扇の要
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せよ。鎮守府近海にいるレーダー搭載深海棲艦と北方のレーダー搭載型深海棲艦が撃沈されたわ。」
「本当!?」
「やったのぉ!!」
「やりましたね!」
「これでずっと楽になったね。」
「さぁ、どうかしら?」
尾張は喜ぶ艦娘たちに白けた横顔を見せた。
「どうしてですか?」
と、吹雪。
「敵が私たちの狙いを完全に読み取っただろうからよ。今私たちが破壊しなくてはならないレーダー搭載深海棲艦はただ一隻。その一隻を敵は守ればいい。それに対して私たちはコンクリートで固められたような防御陣形を突破していかなくちゃならない。できると思う?」
一瞬、空白が開く。そして艦娘たちはしゅんと黙り込んでしまった。今までは敵はこちらの狙いを看破できていなかったかもしれない。だが、今は違う。残る一隻のレーダー搭載深海棲艦を守るべく、全力を挙げて挺身隊を撃滅しにかかってくるだろう。
「さぁ、どうする?捜索を続ける?それとも帰る?」
「ちょっと待ってよ。」
投げやりな尾張の口ぶりに川内がカチンと来たようにキッとにらんだ。
「どうしてそういうことを言うわけ?ここまで来たのに。」
尾張は冷たい青い目で川内を見返したが、何も言わなかった。
「私はあきらめないよ。石にかじりついてでも絶対に探して見つけ出す。」
「深海棲艦の大部隊が押し寄せてきても、同じセリフを言える?」
尾張は唇をゆがめた。
「今に見てなさい。きっと数時間後には例のレーダー搭載深海棲艦から連絡を受けた敵部隊と艦載機隊が私たちをすりつぶしにやってくるわ。それを見ても同じセリフが言えるかしらね。」
「あんたねぇ!!」
川内がぐっと尾張のスカーフをつかんだ。
「『姉の開いた道は私が完全に仕上げて見せる。』って言った言葉は嘘だったの?」
「・・・・・・。」
「あんた、会議室でそう言わなかった?あれは嘘だったのかって聞いてるのよ!!」
「・・・・・・・。」
「バカ艦娘!!!あんたは最低よ!!!最低!!!!聞こえなかった?!最低って言ってるのよ!!!!」
「最低だろうが何だろうが。」
尾張は冷ややかに川内を見返した。
「私は艦隊指揮官よ。どんな最低で使えない艦娘であろうと、私は命を賭けて連れ帰る責務がある。」
川内が締め上げていた手を思わず緩めた。
「最低と言われようが結構。私個人はチャンスは一度きりじゃないと思うから。私はね、無茶苦茶な賭けのような攻め方をして命を散らすことこそバカだと思ってるわ。あなたもそのバカの仲間入りをしたいわけ?だったら私の指揮下から離れて一人で行きなさいよ。」
「く・・・・・。」
「尾張姉様。」
近江が背後からそっとたしなめた。
「もっとも、私はそんなことは許さないけれど。それに、まだあきらめたわけじゃないわ。」
「どういうことですか?」
と、吹雪。
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