第三十五話 扇の要
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を始めます。砲弾の融解熱が第二層にある液体超火薬に達した瞬間に引火、数千度に達する温度で、数百平方メートルあたり一帯を火の海にします。」
ぶるっという音がした。川内が自分の腕を見ると、鳥肌が立っている。もしそんな兵器を向けられたらこちらはひとたまりもないだろう。だが、逆にそれを敵に向けることができれば、数個艦隊分の火力を発揮することができる。まさに怖いものなしではないか。川内だけでなく、吹雪たちも同じ表情をしている。
「フン。これがもっとあったらと言いたそうな顔ね。でもおあいにく様。こんなチート砲弾、早々簡単に量産できないの。」
尾張が冷めた口ぶりで言う。その横から近江が、
「一発の値段が魚雷5本分に相当するので、ヤマト軍令部も積極的に導入しようとは思わないのだそうです。」
「魚雷5本分・・・!!」
川内たちは目を丸くした。そんな高価な主砲弾など聞いたことがない。
「そんなものをこの作戦の最初の局面で投じたのは、もう手段を選んでいられないからよ。私たちの目的は速やかにレーダー搭載深海棲艦を探し出し、それを破壊することなのだから。」
「それは・・・。うん、そうだよね、しゃべっている時間はないよ。先を進まなくちゃ。」
ふと、川内は胸の内に違和感のようなものを覚えていたが、あえてそれを打ち消した。新型兵器を使用することは、敵に対して絶大な打撃を与えられる。だが、その反面、敵にその存在をしらしめそれに対する対抗策を講じさせることにもつながる。前世に置いて、圧倒的な性能を示した零戦に当初は手も足も出なかった米国が、やがてそれを凌ぐ戦闘機を作り上げた様に。
だが、それを恐れていては前に進めないのだ。将来はともかく、今はレーダー搭載深海棲艦を破壊することだけを考えよう。川内はそう思うことにした。
2日後――。
晴天が続いていた。朝日が洋上から徐々に顔を上げたかと思うと、青い空にキラキラと陽光が反射してきらめく。とても過酷な任務の最中だとは思えない。
不意に、ド〜〜ン!!という音がした。音のした方を向くと、巨大な鯨が海面から躍り上がるようにしてその巨体を突き出し、そして背面から海にダイブしていくのが見えた。
躍動感とその美しい巨体が太陽の光を反射しつつ海に消え去る光景に、川内たちは航行をつづけながらしばらく目を楽しませた。
と、尾張たちに、左後方、8時の方向から一機の零式水上偵察機が近づいてきた。機は旋回しながらしきりに何か発行信号を送っていたが、やがてそれにうなずいた尾張が手を上げると、満足したように飛び去っていった。
「何かあったの?」
「いい知らせよ。」
そう言いながら尾張の顔はそっけない。
「あまりいい知らせのようなお顔には見えませんわ。お姉様。」
尾張は、ほうっと息を吐き出して、
「ヤマトにとってはいい知ら
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