第三十五話 扇の要
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している戦力以外にも北方や南方に別働艦隊がいるわよ。ここで手間取っていたら無駄な犠牲が出るわ。」
近江は何気ない尾張の言葉の中にある変化を見て取った。今までは、沖ノ島攻略作戦などの時は、こちらの艦娘の犠牲を無視するどころか、蔑視さえしていたというのに。尾張姉様は明らかに変わってきていると近江は思う。それも今回の作戦が非常に困難だという理由なだけなのかもしれないが。
「わかりました。」
近江はうなずく。紀伊型空母戦艦の二人は、主砲の仰角を最大に展開させた。
「零式弾装填!!1番、2番主砲両方によ。」
主砲の砲身が細かく上下に動き、目標を捕捉する。
「距離、3万!!目標、正面!!姉様、いつでも行けます。」
「よし。」
うなずいた尾張は同航艦娘たちに、
「皆目をつぶっていて。」
「どうしてですか?」
と、吹雪。
「結構強烈だからよ。下手すれば目が失明するかもしれないわよ。それでもよければ、そこで見ていなさい。」
無造作に投げつけられた尾張の言葉に艦娘たちは顔を見合わせたが、各々二人から下がっていった。
それを見届けた二人は横一列に展開し、行足を止めた。波が静かに二人の足を洗い、二人の身体をゆっくりと上下させる。尾張も近江もそれに乱されず、背を伸ばした体は微動だにしていない。川内たちはかたずをのんでそれを見守るだけだった。
「主砲・・・・斉射・・・・・・。」
二人の右腕がゆっくりと後方に動く。
「テェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
二人の腕が振りぬかれるのと轟音と共に主砲が発射されたのが同時だった。放たれた主砲弾は横一列に空気を引き裂いて飛んでいき、瞬く間に敵に迫った。敵が迎撃しようと砲を構えたその瞬間、砲弾が光り輝いた。敵はそれを避けようと回避、あるいは衝撃から守ろうと腕を掲げようとした。
轟ッ!!!
という、海鳴りの様な地鳴りのような何とも言えない音がし、ついで光の大奔流があたり一帯にそそがれ、凄まじい熱波が駆け抜けていった。川内たちは必死に目を硬くつぶり、腕で目を庇っていたが、それでも降り注いでくる光の奔流は耐え難いものだったし、遠く離れていても肌を焼き尽くされそうな熱さを感じていた。
「もういいわよ。」
尾張のこともなげな声で、川内たちは腕を目から離し、恐る恐る目を開けた。目がちかちかする。太陽がまぶしすぎるのか、あるいは先ほどの閃光がまだあたりを漂っているのか。
前方に展開する深海棲艦の姿は影も形もなくなっていた。
「い、今のは・・・・!」
呆然とする川内に近江が説明する。
「ヤマトが誇る最新閃光超高熱主砲弾、零式弾です。第一段階として砲弾の外側を覆っている特殊金属と空気の摩擦による発熱作用から発する光の奔流で敵の目をくらまします。この時砲弾自体の温度は数百度に達し、自己融解
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