第三十四話 マリアナ諸島
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の海域で戦っていたとはいえ、駆けつけることができていたらと悔やまれてしまう。ましてや鳳翔の場合、自分を庇って目の前で死んでいったのだ。その心の傷は第五航空戦隊の二人の比ではないだろう。
「だからこそ、私たちもお手本にすべき人なのだわ。でもね、瑞鶴。鳳翔さんの背中をただ見つめるだけでは駄目よ。」
翔鶴が鳳翔の背中を見つめながら言う。シャンと伸ばした背は、間もなく廊下の曲がり角をまがって、見えなくなった。
「どういうこと?」
「私たちは先輩後輩であろうと同じ艦娘です。遠くから見守るだけではなく、時には手を差し伸べて支えていかなくてはいけない時があるわ。鳳翔さんだって人間です。時には泣きたくなる時があるし、逆に私たちの支えを煩わしいと思うときもあるでしょう。でも、あれこれ考えているだけで手を差し伸べようとしないのは、よくないと私は思うの。」
姉の言葉に瑞鶴は強くうなずいていた。
「そうね・・・そうだよね・・・・。どうしよう、翔鶴姉、改装終わったら鳳翔さんのところに行く?」
「ええ、たまには鳳翔さんをお誘いしてランチをしましょう。そうだ、間宮でお弁当作ってもらって、提督にお願いしてちょっと砂浜でピクニックでもしましょうか。」
「いいわね!よし、そうと決まればさっさと改装を終わらせましょう!」
「ええ、行くわよ、瑞鶴。」
「はい!」
1時間後、マリアナ諸島海上――。
「ふ〜〜〜!!」
鈴谷が大きく伸びをした。吹き渡る風は暑さをまだ含んでいたが、それでも紺碧の海の美しさはヤマト近海では見たことのないほどの物であった。エメラルドグリーンの遠浅の海が島々の周辺に広がり、きらきらと光る白い大きな雲が洋上に浮かんでいる様はまさしく絶景だった。
「やっぱ南太平洋は海がきれいだね〜!!」
風に髪をなびかせながら鈴谷が手をかざす。その隣で天津風が「いい風ね。」と心地よさそうに目を細めながらつぶやいている。
「本当ですわね!せっかくですから、水着も持ってくればよかったですわ。」
「有ですね!うん!!」
「やだなぁ、先輩たち、照月ちゃんも、今はパトロール中ですよぉ。」
と、雪風。
「わかってるよ。帰ってオフになったら近くの島にでも行ってみようかな。ならいいでしょ?」
「それはそうですが、深海棲艦との鉢合わせだけは御免こうむりたいですね。」
鈴谷は仏頂面で不知火を見た。
「あんた一番考えたくないことをよく口に出すね。」
「用心は必要ですから。」
「まぁ、そうだけどさ・・・・。」
鈴谷は肩をすくめたが、そこで熊野を振り返って
「よ〜し、哨戒地点の折り返しまで来たよ。ここまで何もないし、ぐるっと一周できたから、泊地に戻ろうか。熊野。」
「ええ、そうですわね!」
「あ、ちょっと待ってください。」
天津風が急に足を止めた。
「ど
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