第三十三話 究極の索敵網
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でね。無事に帰ってきて。お願いだから。」
「当り前よ。」
尾張は短くそういうと、病室を出ていきかけたが、最後に紀伊を向いて、
「私が帰ってくるまでにちゃんと怪我を治しておくのね。そして、いつまでもしょげかえっていたら、先日のビンタのお返しをさせてもらうわ。」
「ビンタ?」
讃岐が急に顔を上げた。
「へ〜ぇ、ビンタ?紀伊姉様にビンタされたんだ。尾張姉様。」
「う、うるさいわね!!あんたもそのにやけた笑いをひっこめなさい!」
「ふ〜ん?」
「いいわよ、私知ってるもの。あんたが入院をいいことに夜な夜なつまみ食いをしているせいで最近――。」
「わ〜〜〜っ!!!」
「讃岐!!ここは病室なのよ、大声を出しては駄目!」
近江がし〜〜っ!と讃岐に指を立てた。
その日の午後、工廠――。
「夕立ちゃん。」
吹雪が夕立を呼び止めた。
「あ、吹雪ちゃん。改装終わったっぽい?すっごくかっこよくなったっぽい!!」
工廠から出てきた吹雪は、改装を終えて、改二になっていたのだ。
「あ、そうかなぁ・・・・。」
吹雪は顔を赤らめた。
「うん!!」
「ありがとう。・・・そういえば、私だけじゃなくて、麻耶先輩や鳥海先輩、それに飛龍先輩や蒼龍先輩たちも改二になったって妖精さんが言ってたよ。他の先輩方やみんなも改装を終え始めたみたい。」
「よかった!私だけじゃなんだか申し訳なかったっぽいから。」
でも、夕立ちゃんの火力にはかなわないけれどね、と吹雪は笑いながら言った。
「でも、吹雪ちゃんの対空砲火は私はかなわないっぽい!吹雪ちゃんは、これからは防空駆逐艦吹雪ってところかな。」
防空駆逐艦!と吹雪は一瞬頬を高揚させたが、不意に表情を沈ませた。
「どうしたの?吹雪ちゃん。」
「あの・・・清霜ちゃんのことを考えてたの。大丈夫かなぁって・・・・。」
「大丈夫だよ。」
夕立は『ぽい』を付けなかった。
「清霜ちゃんなら絶対大丈夫!吹雪ちゃんや私が信じてあげなくちゃ駄目っぽいもの。お見舞いにはいけないけれど、その分私たちが頑張ってレーダー搭載艦を沈めないと清霜ちゃんが怒るっぽい!」
夕立は飛龍、蒼龍らとともに北方にあるレーダー搭載深海棲艦の撃破に向かうこととなっていた。
「そっか・・・そうだよね、きっとそうだよね!」
吹雪が自分に言い聞かせるように何度も何度もうなずきながら言った。
「それに・・・・。」
今度は夕立が顔を引き締めた。
「それに?」
「私、綾波ちゃんの分まで頑張らないと!綾波ちゃん、改二にも改にもなれなかったから・・・・。」
吹雪は思わず夕立に声をかけたくなったほど彼女の顔色は尋常ではなかった。吹雪は知らなかったが、改装の話が持ち上がった時、夕立は葵にせがんで彼女から綾波についてのデータを見せてもらったことがある。もし
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