第三十三話 究極の索敵網
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り休んで、元気を出してくださいネ、比叡。」
「はい。お姉様、どうか・・・どうかご無事で・・・!!」
祈るような比叡に、金剛はちょっと片目をつぶって、応えて見せた。
2日後――。
「大丈夫なの?!」
思わず紀伊は折り鶴を折る手を止めていた。それもそのはずで、紀伊は初めて知ったのだった。尾張、そして近江を中心とする挺身隊が例のレーダー搭載艦の撃沈を企図として出撃するということを。さらに大和、武蔵を中心とする水上部隊が敵の眼を引き付け続けるため、あえて敵の正面海域に進出するという。
「こんな作戦・・・・・!」
紀伊は絶句した。当然こちらの被害は零では済まない。ミッドウェー本島攻略を前にして個の様な損害を顧みない作戦を遂行していいのか。
「損害を顧みないんじゃない。」
尾張の声が聞こえた。紀伊が顔を上げると、真正面からこちらを見ている。
「私たちは、私たちの道を切り開くために戦う。それだけよ。」
「それは――。」
そうだけれど、と言おうとした紀伊の口が閉じられた。
「あなたが今回の戦いで清霜や比叡に重傷を負わせて自分を責めつづけるのは勝手だけれど、私に言わせれば、それは不可抗力だった。」
「不可抗力!?私が油断しなければ――。」
「あなたは機械じゃない。」
尾張の言葉が紀伊を遮った。
「あなたは機械じゃない。機械でさえエラーを起こすわ。まして私たちは艦娘、人間の端くれ、機械じゃない。ヒューマンエラーは起きて当然の事。でもね、機械は一度壊れてしまえば、そこで終わりだけれど、私たちは死なない限り、あきらめない限り、何度だってやり直すことができるのよ。それをむざむざ捨て去るようなら、所詮はあなたもそこまでの人だったというわけね。」
「ちょっとそんな言い方ないでしょ!?」
讃岐が顔色を変えた。
「讃岐、いいわ。」
紀伊は讃岐を制した。
「紀伊姉様。」
近江が口を開いた。
「姉様は少しでも早くお元気になってください。清霜さんや比叡さんたちはきっと元気になります。元気になった時姉様がしょげていたら、皆が笑いますわ。それに・・・・。」
近江は一瞬つらそうに目を閉じたが、すぐに目を開けていった。
「こんなことを敢えて言いたくはないですけれど、鳳翔さん、そして綾波さんのことを考えてあげてください。」
「・・・・わかった。」
紀伊はすばやく言った。綾波のことは片時も忘れたことはない。そして彼女の死に責任を感じ続けている鳳翔が必死に立ち直ろうとしていることも。彼女はことに呉鎮守府の秘書官である。紀伊よりもずっとずっと重い苦しみを背負ってきているのだ。
「鳳翔さんでさえ、立ち直ろうとしているのに、私が折れてしまったら、きっと二人に笑われるわよね。」
紀伊は寂しく笑った。
「二人とも気を付けて。どうか怪我しない
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