第三十三話 究極の索敵網
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おくけれど、私は紀伊型空母戦艦が優れているから志願したんじゃないわよ。この局面で尻込みするようでは、いっそ深海棲艦に殺された方がましだと思っただけ。私たちには行くか引くかどちらかしかないんだから。」
艦娘たちが口を開く前に、近江が立ち上がっていた。
「皆さん、すみません。尾張姉様の発言に不快を覚えてしまっていたら、申し訳ありません。ですが、私は姉様の最後の言葉に同感します。このままじっとしていても何も変わるものはないと。ですから・・・私も行きますわ。」
「なら、私も行く。」
そういって川内が立ち上がった。
「水雷戦隊の軽快さ、きっと必要になるよ。今回は敵の攻撃をかいくぐりながら、レーダー搭載艦を探すんでしょ?だったら、動きやすい水雷戦隊を連れていった方がいいと思うな。」
「・・・・・足手まといにはならないでよね。」
「その言葉、そっくりそのまま返してあげる。」
一瞬川内と尾張の視線が宙で交錯したが、どっちも不敵な笑みを浮かべていた。
「なら、私たちも行きます!」
吹雪、浜風、浦風、村雨が手を上げていた。
「水雷戦隊には川内さんだけでなくて、私たちも必要です。そうですよね?」
「私たちも、戦います。」
「うちもがんばるけぇ!」
「村雨、いっきま〜す!!」
吹雪たちだけではなかった。堰を切ったように一斉に艦娘たちが立ち上がっていた。
「なるほど。」
長門はふっと口元を緩めた。
「流石は紀伊の妹だ。姉と同じように、皆に気迫を伝播させる・・・いや、取り戻してくれたと言った方が正しいか。」
「姉と一緒にしないで。私は私なんだから。」
尾張は胸に手を当てた。
「よし、だがもう一度聞くぞ。今回の作戦は想像をはるかに超える困難さが待っているだろう。それでも行くか?」
尾張は微動だにしなかった。目は真っ直ぐに長門を見返し、そして静かに強く言い放った。
「姉の開いた道は私が完全に仕上げて見せる。」
「よし。」
長門は強くうなずき返した。
こうして、レーダー搭載深海棲艦という新たな、そして最大の障害を取り除くべく、3つの挺身隊が編成されることとなった。
鎮守府近海のレーダー搭載深海棲艦の撃破に向かうのは、扶桑、山城、大鳳、鳥海、阿賀野、初風 磯風 野分。
北方のレーダー搭載深海棲艦の撃破に向かうのは、金剛、榛名、飛龍、蒼龍、高雄、麻耶、黒潮、早霜。
そして――。
もっとも最重要かつ、困難だと思われる東方に展開するレーダー搭載深海棲艦の撃破に向かう決死隊には、尾張、近江、川内、吹雪、浜風、浦風、村雨が志願したのである。
彼女たちだけでなく、主だった艦娘が悉くと言っていいほど志願したが、あえて少数にしたのは、それだけ秘匿する必要があることと、尾張、近江の紀伊型空母戦艦の底力に頼るところ大であった
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