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ソバレンタイン
第三章
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「それで林太郎君美味しいって言ってくれたの」
「普通に作った方も蕎麦粉のクレープで包んだクリームのもね」
「そうなのね」
「蕎麦粉のいいって言ってくれたら」
「じゃあよかったけれど」
「ええ、私も喜んでくれて何よりよ」
 彼氏がとだ、美穗も笑顔だった。
「他のクラスメイトにも義理配ったけれどね」
「まあそれはね」
「義理ってことね」
「私も彼氏に手作り渡して義理も配ったわ。ただ」
「ただ?」
「バレンタインも蕎麦なのね」 
 悠子が言うのはこのことだった。
「あんたらしいわね」
「そう?」
「かなりね、けれど蕎麦粉のクレープはね」
「あんたも知ってるでしょ」
「だから驚かないけれど」
「蕎麦は偉大よ」
 美穗はにこりと笑って言った。
「スイーツ、勿論バレンタインにも使えるから」
「それは盲点だったわね」
「そうでしょ、まあ麺の蕎麦は難しいけれどね」
「それでスイーツ作られたらある意味神よ」
「そうよね」
「幾ら何でもね、それでだけれど」
 バレンタイン、そしてスイーツの話が一段落してからだ。悠子は美穗にあらためて聞いた。
「あんた今日は放課後どうするの?」
「今日はアルバイトの日よ」
 美穗はあっさりと答えた。
「お蕎麦茹でて丼に入れてからおつゆにお葱に」
「今日もなのね」
「そうよ、それでアルバイトがお休みだとね」
「立ち食い蕎麦屋巡りね」
「そうするから
「やれやれ、バレンタインが終わったらまたお蕎麦ね」
 立ち食い蕎麦の日々だとだ、悠子は顔に実際にやれやれといったものを見せて溜息混じりに述べた。
「本当に色気がないわね」
「そう?」
「花の女子高生が立ち食い蕎麦って」
「いいじゃない、あれはあれで美味しいから」
「それに日本伝統のファーストフードだからっていうのね」
「歴史もあるし」
「全く、どうしたものかしら」
 悠子の溜息混じりの言葉は続いた。
「外見はいいし中身もそんなに悪くないのに」
「この前家に帰ったらお父さんとお母さんに蕎麦つゆの匂いするって言われたわ」
「それ恥ずかしくない?」
「それだけお蕎麦に打ち込んでるからいいでしょ」
「あんたがそう思うならいいけれどね」 
 やれやれといった言葉のままだった。
「まあとにかく今日もなのね」
「お蕎麦よ」
「どうした青春なのよ」
「こうした青春よ」 
 明るく笑って言う美穗だった、そして悠子と二人で意気揚々と登校する。悠子はその美穗から確かに蕎麦のつゆの匂いを感じた、しかしその匂いは決して悪いものではなく微笑みそのうえで笑顔の彼女と共に登校した。バレンタインが終わり静けさを取り戻した学校に。


ソバレンタイン   完


                        201
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