第一章 天下統一編
第十一話 策謀
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俺は軍議が終わると長久保城を離れ郊外にある設営された自分の陣屋に戻った。陣屋は急拵えで揃えたものであまり立て付けが良くはない。明日には引き払うからしっかり作る必要もないから、これで十分だろう。
俺が陣屋に到着すると小姓達が出迎えた。俺は彼らに家老を呼んでくるように指図し、俺は玄関の式台に腰をかけ座る。残った小姓の一人が水桶を持ってくる間、もう一人の小姓は俺の草履と足袋を脱がしてくれた。その後、俺は小姓に足を洗ってもらうと陣屋の奥へ進んでいった。
現在、俺に仕える家老は四人いる。小出吉清、藤林正保、岩室坊勢祐、曽根昌世。俺の叔父、小出吉清、はこの場所にはいない。彼は筆頭家老として俺の所領、摂津国豊島郡、に下向させた。これは彼に内政を任せることにしたからだ。彼は戦場より事務仕事が得意でこの人事に凄く喜んでいた。その彼の知行は千二百石だ。俺は彼を百五十石で家臣にした。しかし、他の家老との兼ね合いもあり千二百石に加増した。他の三人は千石で揃えている。お陰で俺の台所事情は凄く悪い。
秀清には京を去る時、金欠になったら秀清の家に居候するから頼むと伝えている。秀清は俺の話を聞き「おう! 任せておけ」と言っていた。持つべき者は親類である。他の家老達にはこうも気軽に言えない。知行が一万石でも家臣を雇うたびに自由になる知行が減っていく。当たり前のことだが世知辛い。より多くの家臣を雇うために贅沢をするのは当分できそうにない。百万石とはいはないが十万石位領地があれば大分楽になるんじゃないかと思う。これで伊豆一国を貰えないと凄く困ることになる。
俺は軒下を歩きながら外を陣屋を警備する足軽達に目をやった。彼らは俺の姿を確認すると膝を着き頭を下げた。北条攻めに連れてきた兵数は五百だ。
ああ頭が痛い。
兵数五百といえば二万石級の動員だ。非戦闘員も合わせると八百人弱いる。兵糧がいる。金がいる。泣きたくなってくる。仏心に絆されて家臣を抱えすぎてしまった。津田宗恩が連れてきた者達は訳ありの武士ばかりだった。武勇は優れているが敵が多すぎる。
俺は軒下から覗く空を眺めた。俺の暗雲が立ちこめる心境をあざ笑うかのように晴天だ。俺は恨めしそうに空を眺めると溜息をついた。
津田宗恩も良かれと思って紹介しれくれたに違いない。
そういえば。津田宗恩から選別をもらった。銀四十貫と鉄砲を二百丁。この陣屋に置いてある。銀は全部で重さ百五十キロあり、現代価値にして二千四百万円位の価値がある。津田宗恩に「どうして俺に高価な品をくれるのか」と聞いたら「小出様が出世されれば何倍にもなって返ってきます。これくらい安いものです」と笑いながら俺に答えていた。
俺は足軽達に警備に戻るように命令し、再び陣屋の奥に進んでいった。奥には座敷があった。俺はその座敷に入っていき、一段高い場所に腰をかけ
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