第一章 天下統一編
第十一話 策謀
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揺さぶるために手札が欲しい。江川英吉が俺に大人しく力を貸してくれる材料になるものはないだろうか。今の俺は何も持っていない。でも、国人なら領地を保証することだろうな。
江川英吉が徳川家康に通じた理由は徳川家康が、東海道の大大名であり伊豆国と徳川領が接していることから、伊豆国に侵攻して来ると考えたからだろう。
その後徳川家康がその土地をそのまま領有する可能性は大きい。そう考えれば徳川家康を頼るのは自然な成り行きだ。江川英吉には秀吉との面識がない。そうなると頼るべきは隣国で一番の大勢力となる。
江川英吉を調略するには俺を信用できると思わせる必要がある。
俺の肩書きでは江川英吉が降伏しても俺に積極的に協力するかは微妙だ。俺一人で無理なら徳川家康を動かす必要があるが、その選択肢はさっき捨てた。残る手立ては秀吉に頼るしかない。
秀吉に伊豆国の知行安堵状を貰いに行こう。秀吉から怒鳴られる可能性があるが駄目もとで行くしかない。
俺は乾いた書状を折り畳み紙で包み封をした。
「長門守、これが風魔小太郎への書状だ」
俺が藤林正保に声をかけると、舞い上がっていた藤林正保は慌てて姿勢を正し恭しく書状を受け取った。
「江川英吉を味方に引き入れるために関白殿下に相談してくる」
俺は藤林正保にそう言い、まだ盛り上がっている二人の家老をほっといて立ち上がった。すると家老三人の視線が俺に集中する。藤林正保は俺が脈絡もなく話したので要領を得ない様子だった。
「関白殿下にございますか?」
「何をなされに行かれるのです?」
藤林正保と曽根昌世が訝しむように俺に聞いてきた。
「関白殿下から伊豆国の知行安堵状を貰うのだ」
俺はあっけらかんと答えた。駄目なら駄目で違う方策を考えるだけだ。
「江川英吉の知行安堵状ですか?」
二人とも勘違いしているようだ。だが、それでもいいな。秀吉から断られたら、江川英吉の知行安堵状を貰えるように頼んでみよう。
「違う。俺に伊豆国を与えると書いた知行安堵状だ」
俺がきっぱりと言うと二人は仰天した顔で俺のことを見ていた。岩室坊勢祐は俺のことを愉快そうに見ていた。
「殿、流石にそれは無理ではありませんか?」
藤林正保は狼狽した。
「分かっている。駄目もとで関白殿下に頼んでくる。無理なら江川英吉の知行安堵状を代わりにもらってくる」
「あまりにわがままな要求をされると関白殿下の怒りに触れるやもしれませんぞ」
藤林正保と曽根昌世を諌めた。豊臣秀次の弟、豊臣秀勝、のことを言っているのだろう。豊臣秀勝は領地が少ないと秀吉に不服を申し立てて丹波亀山十万石を改易された。俺は豊臣秀勝のように馬鹿じゃない。徳川家康が伊豆国を調略済であることを報告して、彼の地が
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