第一章 天下統一編
第十一話 策謀
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たのか?」
俺は鋭い目で藤林正保を見た。
「申しました。それでも娘を差し出すと言っておりました」
「娘の歳はいくつだ?」
「十六歳です」
俺は眉間に皺を寄せ考え込んだ。風魔小太郎は何を考えているのだ。俺を殺す気か。その可能性はあり得る話だ。だいたい乱歩の頭領の娘に人質の価値があるか甚だ疑問がある。
「長門守、素破の頭領の娘を差し出されて人質の価値があると思うか?」
「殿はそう思われるのですか?」
藤林正保は真剣な表情で聞き返してきた。乱歩とはいえ赤い血の流れる人の子だ。自分の娘は可愛いだろう。こんな敵地に送り込むことは気が引けることと思う。
「思わない」
俺は考えた末に自分なりの考えを出した。
「だが、その娘が風魔小太郎の娘である証拠があるのか? この私を殺すために送り込まれた素破の可能性もある。風魔小太郎に娘と別に手土産を用意しろと申しつけよ」
「手見上げとは具体的に何を望まれるのでしょうか?」
「私は韮山城に籠もる江川英吉と徳川家康の旗本となった江川英長は裏で通じていると見ている。どうしても違和感を感じるのだ。友人同士である北条氏規と徳川家康に江川の者がいる。だから、二人の間で連絡ができなくなるようにしろ」
俺は冷たい目で藤林正保を見た。藤林正保は唾をごくりと飲み込んだ。
「江川英吉と江川英長が通じているなら必ず連絡を取り合うはずだ。風魔衆なら土地勘があるだろう。連絡役を全て殺せ。江川英吉と江川英長が不安を煽るためにな。風魔衆がこの役目を全うできれば北条征伐後に家老として召し抱えると伝えよ」
「仰せしかと承りました。では殿の直筆の書状をいただけませんでしょうか?」
藤林正保は俺に平伏し書状をくれと言ってきた。俺は後で書くというが早く書いて欲しいと急かされ、小姓に机と硯と紙を用意させた。俺は筆を走らせながら議論をする羽目になった。
「もし、殿の見立て通りならば江川英吉を私達に降伏させることができます。ですが、もう一押し足りません。徳川の素破を南豆州に近づけないように掃除が必要です。徳川家康は必ず焦るはずです」
曽根昌世は口角を上げ俺のことを見た。俺も口角を上げ笑みを浮かべた。
「長門守、やれるか? これが私達の将来を決める戦となる」
俺は藤林正保を真剣な顔で見た。藤林正保は深く頷いた。
「問題ありません。必ずやりとげてみせます」
「金が必要なら、津田宗恩から貰った餞別がある。自由に使ってくれ」
「殿、ありがとうございます」
「別にいいさ。金は使うべき時に使わなければ意味がない」
俺は藤林正保と曽根昌世の顔を見た。これで後方の攪乱は心配ない。風魔衆が本当に俺に味方したか分かるはずだ。もし、動きが無ければ裏切ったと見做し娘は
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