第一章 天下統一編
第十一話 策謀
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彼らも凄く曰くがある。おかげで黒田長政から睨まれることになった。
彼らは黒田家に虐殺された豊前|城井氏の残党だ。この一族は関東の名門、下野宇都宮氏、と同族になる。北条攻めで何かの役に立つと思い考えなしに召抱えたが薮蛇だった。当主・城井鎮房、その嫡子・城井朝房は黒田家に惨い殺され方をした。俺の元に身を寄せているのは城井鎮房の四男・城井経房とその城井家家臣三十人だ。城井経房は俺に仕官する時に城井朝房の遺児による御家再興を願い出てきた。俺の陪臣でいいならと受け入れた。俺も一度雇った以上は責任を持って彼らを守るつもりでいる。だが陰険な黒田長政に睨まれることで胃が痛くなる。黒田長政は後藤基次を執拗に追い込み死に追いやった危険な男だ。父親の黒田孝高は物分かりがいいのに黒田長政は血の気が多く陰険だ。俺のところに定期的に手紙を送ってくる。手紙は開封せず読まないことにしている。
領地の大半を俺の家臣達にばら撒き金欠状態で頭が痛いのに、その他のことで頭が痛いことが増えている。俺は頭を押さえながら深い溜息をついた。家老達は俺に声をかけない。もう、俺の日課だから敢えて声をかけなくなっている。俺もそうしてくれる方がありがたい。
「殿は韮山城でどう動かれるつもりなんです?」
ずっと黙っていた岩室坊勢祐が開いた。
「北条氏規の家臣、江川英吉を味方につけるつもりでいる。俺が北条氏規を直接交渉しても彼が心変わりするとは思わない。徳川には江川英吉の子供、江川英長が臣従し、徳川の旗本として北条征伐に従軍している。徳川に口利きをして貰えればことが順調に運ぶと思うんだが」
「親子で敵味方に分かれる。大勢力に囲まれた国人の悲哀を感じますな」
曽根昌世はしみじみとした様子で呟く、俺のことを厳しい表情で見た。
「殿、江川氏を調略すること容易なことではありませんぞ。それと、徳川に軽はずみ頭を下げるのは止めるべきです」
曽根昌世が俺に釘を刺してきた。元徳川家臣だから徳川家康とあまり積極的に関わりたくないのだろうか。彼の表情は徳川家康のことが好き嫌いで言っているような様子は無かった。
「徳川から話を持ちかけてくれる可能性はないか? 北条氏規は徳川家康と友人だろう」
俺は身内だけの合議の場であるから徳川家康のことを呼び捨てにした。家老達も気にした素振りはない。
「徳川家康は情にほだされるような御仁ではありません。必要とあれば最愛の嫁も息子も迷わず殺します。そう割り切れる人間です。冷酷非情な人間とは言いませんが己の身を守るためなら誰でも躊躇なく殺します。もし殿に話を持ちかけるなら向こうに利があると見るべきです」
曽根昌世は俺の考えを斬って捨てた。徳川家康に一時期とはいえ仕えた者の話だけに含蓄のある答えだ。
確かに戦国大名が良
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