第一章 天下統一編
第十一話 策謀
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いた。その証拠には生駒親正は十河千松丸に鼻紙代と称して三千石を与えていた。鼻紙代という部分に嫌味を感じる。
その後、十河千松丸は秀吉に謁見する機会を得る。この時に秀吉は生駒親正に十河千松丸への処遇を叱責したらしい。そして、十河千松丸が讃岐国に帰国直後に彼は急死した。誰の目にも生駒親正が殺したように思える。俺もそう思ったが立場上、軽率な言葉は口にしなかった。
生駒親正は十河存英達に十河千松丸の遺体との対面すら許さなかったそうだ。この辺りにも生駒親正に後ろめたさがあったのではと勘繰ってしまう。
十河存英達を召抱える時、生駒親正の屋敷に俺が直接出向き会ったことがあるが善人面した欲深い悪人に見えた。生駒親正は十河存英達を召抱えることに不服を言うことなく逆に手放しに喜んでいた。十河存英達のことが余程邪魔だったのだろう。
十河旧臣達を召し抱えるにあたり問題が起こった。彼らは七百五十人いる。これを全員雇うことは難しい。そこで小身の者は俺の直臣として五十人ほど雇用した。残りは客分として俺の領地でしばらく生活してもらうことになった。彼らには北条征伐後に秀吉から七万石を与えられるお墨付きを得ていることを伝え、全員雇うから今は我慢してくれと頼みこんでいる。行く当てが無く困っているようだった彼らは俺の申し出をとりあえず受け入れてくれた。
秀吉から加増されれば間違いなく人手が無くて困ることになる。十河旧臣達は絶対に手放すつもりはない。
「殿、十河の者達だけなく、悪右衛門達も気をつけた方が良いと思います。悪右衛門に他意がなくとも細川忠興は悪右衛門達のことを殺したがっています」
曽根昌世は赤井直義の名を出した。赤井直義は丹波赤井氏の出身で最近まで京で隠棲していたが津田宗恩が俺に紹介した人物だ。彼の父親は「丹波の赤鬼」と恐れられた赤井直正だ。
丹波赤井氏は当時織田軍であった明智光秀に滅ぼされた。その後、明智光秀が滅び丹波国に領地を持ったのは細川忠興の父、細川藤孝、だ。丹波の領主になった細川家は赤井直義をどういうわけか付け狙っている。
細川藤孝と赤井直義の件は話をつけた。だが細川忠興は赤井直義を見逃す気がなく不満を抱いているようだった。父親の前では露骨に不満を口にしなかったが、俺のことを睨んでいた。あの目は赤井直義を殺す気満々だ。戦場のどさくさに紛れて赤井直義を暗殺しに来る可能性がある。韮山城攻めに細川忠興が参加する。
ああ。頭痛がしてきた。
「生駒親正と細川忠興の陣から離れた場所に陣を張るつもりだ。俺は軍監みたいな存在だから内大臣の側に居ればいいと思っている」
「それがよろしいでしょう」
曽根昌世は俺の提案に同意した。藤林正保も俺の意見に同意見なのか頷いていた。
ここで話に出ていないが津田宗恩が紹介してくれた人物がまだいる。
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