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蒼き夢の果てに
第7章 聖戦
第161話 魔将ダンダリオン
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世界に行っている間の俺は、かなりだらけて居たのは間違いない。
 ただ――

「シノブ」

 ただ、現実問題として向こうの世界の有希の傍で、俺の方からハルケギニアに連絡を入れる事が出来たかと言うと、それは流石にかなり疑問なのだが……。但し、それでもその方法を思いつきもしなかった事には問題がある。
 今回の場合は、俺の置かれた状況を良く知っていたはずの湖の乙女と妖精女王が居たので、此方の世界に大きな問題はなかったと思うのだが――

 矢張り、かなり緊張感に欠けていたのは間違いない。

「シノブ、未だ大丈夫なのですよ」

 人の心は絶望に染まってなどいない。世界は未だ明日に希望を抱いているのです。
 何故、俺が不満……と言うより、不安を感じて居るのか。その答えを口にするダンダリオン。その口調はそれまでの妙に居丈高な、明らかに不機嫌だぞ、と言う事が分かる物などではなく、彼女の外見年齢に少し相応しくない妙に大人びた、何処か優しげな口調。
 本当に姉が居たのなら、こう言う口調で話し掛けて来るのではないか、と感じさせる雰囲気。

 そう、俺は不安を感じて居た。確かにロマリアやゲルマニアに代表される人間の意志。領土欲やブリミル教の指導者的な欲望に端を発する出来事はすべて防いで来た。しかし、その結果発生する可能性のある負の感情。怨み、(ねた)み、(そね)みや、阻止された連中が死する際に発生させる強い感情が世界に満ちる時、その陰の気が世界にどんな悪影響を及ぼすか分からない。
 もし、這い寄る混沌や名づけざられし者の目的が、そのような陰気で世界を満たす事が目的ならば……。

 しかし――

「心配するなダンダリオン。俺は未だ焦ってはいない」

 誰にも気付かれないように、円卓の下にある俺の左手をそっと握って来た絹の長手袋に包まれた華奢な手。その手を強く意識しながら、しかし、表面上は冷静な振りをして答える俺。
 大丈夫。そう言う感情を強く出す事に因り。……繋がった手を強く握り返す事に因って、俺を向こうの世界に閉じ込めたと感じて居る少女の罪悪感を振り払う。そう、あっちの世界に行ったのだって、奴ら(クトゥルフの邪神)の思惑だけではなく、むしろ、此方の人間関係の補強のために行かされた。そう考える方が妥当だと思う。

 これだけ人生に影響が大きい人間関係が偶然だけで出来上がる訳はない。俺と湖の乙女。妖精女王。それに、崇拝される者との繋がりが強く成る為には、何処かのタイミングで地球世界に行って前世の彼女らとの邂逅を果たす事は必要だったはず。
 大体、崇拝される者との契約を果たす為には、地球世界の長門有希が持っていた火避けの指輪が必要だった以上、あの地球世界への異世界漂流譚は必要な道行きだったと断言出来る。

「そうしたら次は
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