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蒼き夢の果てに
第7章 聖戦
第161話 魔将ダンダリオン
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ワルツを広めたのは王太子ルイ……つまり俺と言う事になるのでしょうが、広めるのと、本人が好きで舞うのとは意味が違う。まして次から次へと現われては過去へと流されて行く貴族どもにも興味などなく、まして所詮は影武者に過ぎない俺には、後宮や寵姫、公妾(こうしょう)などとも現実には無縁。
 まぁ、中には娘を紹介して来る貴族なども存在していたのだが、其処はソレ。テキトーに一曲だけ踊った後にすっと身を躱せば角は立たない。

 そうやって、当たり障りのない時間を過ごし、ある程度、俺へ挨拶に訪れる貴族が居なくなる頃合いを見計らい……。



「はい、開いていますよ」

 オーク材製の重厚な作りの扉を二度、軽くノックした直後に返される聞き覚えのある声。
 現在、宴が行われている鏡の間を抜け、いくつかの部屋、回廊を通りぬけたその先。
 霊的な防御に優れたこのヴェルサルティル宮殿に於いても、その強弱に関して言うとかなり強力な結界を施してある部屋。本来ここは王妃の書斎として作られた部屋なのだが、現在、その主人と成るべき王妃が存在しない以上、こう言う集まりの際に使用される事が多くなった場所。

 このハルケギニア世界には結界術……情報の漏えいを防ぐ類の魔法はないのだが、何故か自らと感覚を共有する事を可能とする小動物系の使い魔を持つ事が可能な世界。故に事、諜報と言う部分から見ると敵が秘密として置きたい情報を結構、簡単に入手可能な世界と言えるかも知れない。
 そもそも屋根裏に潜むネズミが、自然に其の建物に棲むネズミなのか、それとも何処かの魔法使いが使役する使い魔なのかを見分ける術が系統魔法に存在しない以上、小動物系の使い魔を使った諜報活動を完全に防ぐ事は難しい。……と思う。
 普通に考えると重要な情報の漏えいを防ぐ意味から、何らかの形で結界術に近い魔法があったとしても不思議ではないのだが……。

 このハルケギニア世界の歪さ。もしかすると俺が知らないだけで、系統魔法の中にも俺の知っている結界術に類する魔法が存在するかも知れないのだが、どうにも歪な形……攻撃力偏重だけが目立つ魔法についてぼんやりと疑問を思い浮かべながらも、扉を開く俺。

 その先に存在していたのは――
 両開きの重い扉を開くと、部屋の奥には赤色系の派手な大理石製の暖炉。本来、このヴェルサルティル宮殿と言う建物は、夏はトコトン暑く、冬はメチャクチャ寒いと言う居住施設としては最悪の物件。更に昼なお暗い室内は猫並みの暗視能力がなければ本を読む事さえ出来ず、水の便も非常に悪いと言う、人間……と言うか、現代日本からやって来た俺に取っては絶対に住みたくないハルケギニアの住居ナンバーワンに輝く建物だったのだが。
 但し、科学の力と言う物は素晴らしい物で、現在、役に立たない……と言うか、見た目は豪華
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