MR編
百四十四話 一知半解
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!昔の話を蒸し返さないでよー!」
むくれたアスナをなだめるように、リズがその肩を苦笑してポンポンと叩いた。
「まぁそう言うわけだから、喧嘩自体は久々だけど、珍しくはないのよね」
「だから、喧嘩じゃないのよ。ただちょっと、意見が行違っちゃって……それに私が冷静さを失っちゃって……」
「まぁ、話を聞いてた限り、どっちが悪いとかそういう話じゃないわよね」
少し真剣な表情になったシノンが、目の前のオレンジを見定めつつそんな風に呟いた。実の所彼女としても、それなりにこの話題を真面目なものとして認識している。少なくとも彼女が知る限りにおいて、リョウがそこまで不躾な物言いをすることは珍しいからだ。
「うーん、でも正直、これに関してはリョウの方がどうかと思うわよアタシ」
「え?」
「だってそうでしょ。言い方はあれだけど、リョウの言ってる事って、アスナにとっては余計なお世話じゃない」
「そ、そんな……」
若干憤慨したように言う彼女の事を慌ててなだめようとするが、リズはその反応を予想していたように彼女を手で制する。
「まぁ、最後まで聞きなさいよ。だってアンタだって、リョウに言われた事がその……分かってなかったわけじゃないでしょ?ただ、納得できなかっただけで」
「それ、は……」
その問いへの回答は、既に自分の中で出ていた。答えはイエスだ、あの日から数日経った今ならばはっきりと分かる。自分の中でも、その結論に行き着いて居ない訳では無かったのだ。ただ今でも絶対に、それを認めるわけには行かないと思うし、認めるつもりもない。何故ならその結末を認めることは、「ユウキの人生がそれまでの物である」という事を認めることに他ならないからだ。そんなのは絶対に嫌だし、その為に諦めることを容認できるはずもない。
「……分かっては、居るつもり……でも!」
「はいはい、それ以上言わなくていいわよ。もう泣きそうだし、見てられなくなるから」
よしよしとするように、リズが困り顔でアスナの頭を撫でる。その仕草に、自覚しないまま緩みかけていた涙腺から溢れそうになる物を何とかこらえて、続きを促す。
「とまぁ、こんなフラフラだけど、この子も分かっては居るわけよ。そこに態々言うあたり、今回の事って、なんていうか、リョウもおせっかい?それこそ、余計なお世話というか……」
「まぁ、確かにちょっと余計かもっては思うけど……」
「……そ、その……」
と、それまで黙っていたサチが、不意に遠慮がちに手を挙げる。それを見てリズはコクリと頷いた。
「ごめん、好き勝手言ったわ。リョウの事、サチはどう思う?」
「あ、うん……その、リョウはね?絶対、アスナの事を責めるためにそういう事を言ったんじゃないと思うの……ただ……」
そこまで言って、美幸は不意に口をつぐむ。その様子に、
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