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SAO─戦士達の物語
MR編
百四十四話 一知半解
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た事しかわかんねーんだが」
「あら、そんな風に聞こえた?ならごめんなさいね」
「気にすんなお互い様だ」
「はぁ?」
「あぁ?」
この場に余人が居れば、バチバチと二人の間に火花が散っているのがわかったかもしれない。が、幸か不幸か、この場に彼ら以外の人間はいない。本当はアイリが居れば最高だったのだが、生憎と彼女は今別の場所で素材集めをしている。
が、普段ならここから言い争いに発展する二人はしかし、今回はそうなるより早く、アウィンの方が表情を緩めた。

「ま、いいわ。隣で辛気臭い顔し続けられたら溜まらないって思っただけだし」
「……微妙に皮肉っぽい言い方になんのどうにかなんねーのかお前」
「それこそお互いさまよ」
「はっ、そりゃそうだ」
鼻で笑ってリョウはアウィンに背を向けて歩きだす。と、今度は彼の方から振り向いた。

「あぁ、でもまぁ、御心配には感謝しとくぜ会長」
「は……?」
完全に不意打ち気味に放たれたその言葉に、アウィンが呆けたような顔をする。

「お気を使わせましてどうも申し訳ない。お優しい上司でおりゃ幸せだぜ」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!私が心配?貴方を!?なんで!?」
「あ?」
「そんな事一っ言も言った記憶ないんだけど!?」
慌てた様子で喚く彼女に、リョウは首を傾げながら頭の後ろを書いた。何をいまさらと言わんばかりに軽くため息をついた。

「いや、天ま……アイリが言ってたぞ。「ああいうのはアンなりに心配してるんだよ。だから嫌っちゃだめだよ?」とかなんとか」
「……!……!」
「?」
何かを怒鳴り散らそうとするようにアウィンは何度も口をぱくぱくと開閉する。が、何も言わない彼女に特にそれ以上話すことはないと感じたのだろう、リョウは再び踵を返すと、片手をヒラヒラと振りながら狩へと戻っていった。
その様子を見送って数秒の後。

「どこからみてたのよ……!」
頭を抱えて、彼女はその場にうずくまった。

────

「しゃんとしてる、ね」
ぽりぽりと頬を掻きながら、リョウは周囲に獲物がいないかを探しつつ、一人他のメンバーがいない丘を登っていく。以前の自分よりも自分がしゃんとしているというのなら、それはそのままズバリ、杏奈にきっぱりとしたことを言われたからであり、和人にも心配をかけてしまったからだ。正直あまり自覚はなかったのだが、二人のどちらからもああ言われてしまっては、自分が相応にしょげた顔をしていたらしいと認めざるを得ない。
和人にはああいわれたが、流石に家の外でまでいつまでもそんな重い表情をしているわけにはいかないし、自分で原因を作っておいて、今更割り切れずにうだうだしているのでは女々しい事この上ない。

「意地張ってカッコつけてってか……?ったく、どっちがガキっぽいんだか」

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