65.Again And Advance
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が、同じ黒の力を僅かでも宿しているのならそこいらの魔石とは比ぶるべくもなく好い薪だ。
薪を喰らい、炉にくべる。そして精錬を始める。
黒天竜としての敗北による固定観念の破壊。
新たなる可能性の器の想起。
そして、材料。
黒魔石――嘗てよりの古の滅波、母なる力。
神の血――忌むべき相反する異物、邪なる忌光。
人の組――これまで軽視し、しかし神によって可能性を見出されし器。
始めよう、新たなる器の創造を。
始めよう、新たなる可能性の模索を。
= =
ひたり、と、小さな小さな足音。
やけに大きく響くその音に、その存在感に、場にいるほぼ全員が息を呑む。
まるで水浴びの直後のように体から溶岩を流れ落とさせた『それ』は墨のような漆黒の頭髪を揺らし、服とも鎧とも皮膚とも知れない硬質化した何かに身を包み、そして血のように深紅い瞳と、星のように眩い金の瞳をうっすらと開けて顔を上げる。
「――広いな。成程、人とはこれほどに広い世界を視ているのか」
まるで世間話をするように発した声に――金色の瞳に――そしてその顔立ちに痛烈なまでの既視感を覚える周囲を尻目に、『それ』は手を握り、開き、そしてその爪を漆黒の鉤爪に変形させて無造作に横一線で振り抜いた。
瞬間――偶然にもその横振りの直線状にいた数名の冒険者が夥しい鮮血を放出し、ばらばらに引き裂かれた武器と鎧と自分の血の上に崩れ落ちた。遅れて、60層の端の壁にゾガンッ!!と音を立てて5つの切れ目が浮き出た。
「――あ、え?」
「……おれ、なんで、こんな………」
「ポーションッ!!ハイポーションを大至急怪我人へ!!急がなければ手遅れになる!!」
『親指の疼き』が収まらなかったフィンの間髪入れない怒声と共に、彼の槍が振るわれて『それ』に吸い込まれ、あっさりと捌かれた。殺すよりも治療の時間を稼ぐことが肝要の攻撃ではあったが、それでも魔物を死に至らしめるには十分な威力であったにも関わらずだ。
「まるでこれまでと見え方が異なるな。先程まで煩わしい蠅のように鬱陶しかったが、同じ目線に立つと新鮮なものだ」
「君は、誰だ!!」
フィンの直感が、人生をかけて積み込んだ経験則が、『それ』に痛烈なまでの危険を感じていた。本来なら部下も知り合いも見捨てて逃走を決め込む程の死期――先ほどファミリアの仲間が輪切りで即死しなかったのが不思議でしょうがないほどの力を、『それ』は持っている。
そして何より、『それ』は余りにも――余りにも似すぎていた。
「『狂闘士』に、オーネスト・ライアーに瓜二つな顔の君は一体誰だッ!!」
恐ろしく整った顔立ち。
片方だけながら、彼と同じ
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