65.Again And Advance
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も、一部ファミリアの連携を崩して命に手を届かせようとしていた黒装束も、平等に突然現れた溶岩に呑まれ、死んでいく。
「このまま終わらないとは思っていたがな――アズ、俺が通るから鎖をどけろ」
「もういいのか?」
「これ以上は寝ていられん」
剣を放り捨てて無手で立ち上がるオーネストを見て、アズは剣を使わないのかとも聞かずに鎖の檻の一部を開けた。実際にはオーネストの剣は無理な攻撃の連続でとうに限界を迎えていたのだろう、と考えながら。
「俺、ちょっと手伝えん。任せていいか」
「言い出しっぺはお前だが、乗ったのは俺だ。ケリをつける義理くらいあるだろ」
終わりが近づいている。
僅か1日の間に起きた激動の戦乱の収束点が、溶岩の内から這い上がってくる。
= =
ずっと考えていた。生存の為の道を。
予想外に次ぐ予想外。足?きに重なる足?き。
苦し紛れの策を看破される可能性を見据えていたが故に辛うじて存在を保つことが出来たが、それも尽きかけていた。炉にくべる薪が尽きれば、炎は燃え尽きて消える。
何を間違ったのだろうか。
三大怪物たる己が漆黒の身が人間に劣る筈がない。母さまの与えてくれた、神を殺すための尖兵に相応しい威容はそれに見合った能力を発揮し、あのちっぽけな人間共を後一歩の所にまで追い込んだ、だというのに人間はいつもその先に踏み込んでくる。嘗て片目を失ったあの瞬間も矢張り、そうだった。
考える。考えて考えて、黒き雑兵が人間を襲い始めても考え、そしてふと思う。
――あの人間は。
オーネストと呼ばれたあの男は、人間というちっぽけな存在でありながらどれだけ壊れても決して揺ぎ無い殺意で戦闘を塗り固めていた。人理を超越した存在である己さえも「異常だ」と思わせるだけの力――感情、意志、魂の咆哮。
人間には。黒竜の想像を踏み越え、神の力さえ御する可能性を引き出すことが出来るのか。
――あの人間も。
『繭』が破られて敗走する瞬間、黒竜はそれを破った人間がこちらに手を差し出しているのを感じた。己の死が迫っていたというのに。黒竜は敵であるのに。なのに、「母」という存在に抱いた感情を通して、黒竜とあの金髪の少女は一瞬だけ通じ合った。
超越存在である筈の己と同じ思考を抱く成長性が、人間には秘められているのだろうか。
もう1000年以上の年月が過ぎた。
黒竜であることに誇りもある。
だが、もしかすれば――己も変革すべき時が訪れているのではないだろうか。
――ならば、我も一歩先へと踏み込もう。
上手く行く保証もない無謀で異端的な変化。それを為すための薪は上で人間と戦い、動きを鈍らせている。母さまが何のつもりで遣わしたのかは知らない
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