65.Again And Advance
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が、放つ気迫と意志の力は実に良い。
そう、オーネストの強さは特別な力ではない。
オーネストの強さは、魂の慟哭と折れない意志だ。
ただそれだけ。神の力も伝説も才能も必要ない――存在しなかったところで、オーネストなら必ず到達する。あったから強く見えたが、本当は全てなくてもよかった代物なのだ。
「奴ハ限界を目の前にしタ時、己を乗り越え、限界ノ更ニ先へ踏み込む。踏み込めずに力のみヲ与エられることを待った貴様でハ、至高ノ熱戦には到達できナい」
「………芥共が!!単細胞生物共が!!どいつもこいつも、愚か者は決まって奴を庇う!!奴に憧れる!!奴に群がる!!人殺しの、汚らわしい、人間以下の屑虫にぃぃぃぃッ!!!」
黒く染まった頭髪を振り乱し、頭の皮を剥ぎ取るようにぐちゃぐちゃと音を立てて頭を文字通り?き毟ったオリヴァスの、劣等感や鬱憤を全て込めたような絶叫が響いた。
「黒装束も大分数が減った。そろそろ諦めて俺の経験値にでもなれや、クソ黒ヒステリー野郎」
「オーネスト狙いじゃなくったって、アイズに手を出した時点であたしたち腸が煮えくり返ってんだよね。だから喋ってないでとっとと討伐されろ、魔物!!」
「後がつっかエテイる。嘗テの同僚のよしみ、前座ハ去レ」
この場に、オリヴァスを脅威として捉える人間はいない。
存在するだけで無視できなくなる台風の目――オーネストと違い、オリヴァスはこれだけの力を手に入れても戦いの中心としては扱われない。その力も、片手間に多くに与えられた力と同等の黒い力を受け取ったに過ぎない。紆余曲折あって黒竜を倒すに至ったオーネストと違い、オリヴァスは何一つ目的を達成できていない。
自分の考えだけが上手くいかない。与えられた力を十全に発揮してもユグー一人さえ突破できていない。黒竜討伐直後という圧倒的なアドバンテージを得たにも関わらず、ロキ・ファミリアに妨害され、随所でフィンたちレベル6クラスとオッタルの力で黒装束は着々とその数を減らしている。
このまま終わることが出来るか――迷宮の尖兵として。
「認めるか……認めるか!!認められ――」
言葉はそれまでで、前触れはなかった。
ただ、オリヴァスの背後に溶岩の柱が生まれ、それがオリヴァスの肉体を瞬時に焼却し、体に残った魔石だけが溶岩の中に取り込まれた。ベートとティオナは何が起きたのか分からずに唖然とし、ユグーは手の刺青が疼き始めたことを自覚した。
消滅する寸前にオリヴァスの視界が捉えたのは、彼に視線すら向けておらず、オリヴァスの「次」に目を向けるオーネストの姿だった。
オリヴァスという男は、オリヴァスであるという必要性がないままに消滅した。
オリヴァスだけではない。力任せの戦いで攻めあぐねていた黒装束
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