乙女の章
].Chorale(Ich freue mich in dir)
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音を彼らに遣わし、廃れし人の心癒す者とならん。
聞け、人よ。古の王家に連なりし異国の者、兄弟争いし時遠き海より来たれり。そは神のご意志により、新しき盟約を齎らすものなれ。
時違え、聖別されし者滅びた街に現れん。そは乙女の血統に連なりし者なれ。かの者、旅人に神の新しき言葉を伝え、廃れし国を統べる者を呼び覚まさん。その者の言葉、原初の神の新しき契りなり!決して軽んずることなかれ! -
そう告げる終えると、聖グロリアは眠るシュカの頬へと手をやり、「目覚めよ!汝が愛しき者のために!」と言ったのであった。
すると、シュカのその瞳は少しずつ開いてゆき、シュカはその場に起き上がったのであった。
「私は…。」
「何も考えず何も申すな。さぁ、愛すべき者の元へ行くがよい。」
聖グロリアはシュカに優しく手を差し伸べ立たせると、ハンスの元へと行くようそっと背中を押したのであった。
しかし、そのような中で一人だけ、この場から抜け出ようとする者を聖グロリアは見逃しはしなかった。
「そこの男、何故我に背を向けるや?」
その問い掛けに驚いて跳び上がったのは、他でもないヴィンマルク卿である。だが、その言葉に返答することなく、彼はトレーネの森へと走り去ってしまったのである。
「愚かな男よ。汝はこの森より抜け出ること儘ならじ。死するまで森の中を彷徨うがよい。」
これは、言わば呪いである。心より改心するならば解放されるが、そうでなくば永久に彷徨わなくてはならなくなる。
これは聖グロリアに与えられし力であり、逆に言うなれば、この聖グロリアに許されたのなら解放されるのである。
しかしその後、逃げ出したヴィンマルク卿の姿を見た者は、誰一人としていなかったのであった。
「人よ、聞け。これより先、決して原初の神へと生け贄を捧ぐべからず。神はそれを善きものとされず、これを拒むであろう。人よ、原初の神へ真実なる心を捧げよ。その証とし、祈り、音楽、他の者への奉仕、そして愛を忘れてはならぬ。さぁ、去り行くがよい!」
そう言い終えるや凄まじい突風が巻き起こった。
「あ…!」
しかしその中で、シュカは見た。聖グロリアと共にあるラノンの姿を…。
風吹き荒れる中、神に命を捧げた多くの乙女達が白き衣を纏いて集っているのを、シュカははっきりと見たのであった。
その中には一人、シスターがいた。しかし、そのシスターが何故にその場にいたのか、シュカには理解することは終ぞなかったのであった。
風が止むと、全ての者は驚きのあまり言葉を無くしてしまっていた。
そこにはもう聖グロリアどころか、白き薔薇も、泉さへも全て消え失せていたからである。
「なんと…この目で奇跡を見ようとは…。」
最初に口を開いたのは大司教であった。
「シュカ、大丈夫だったか?」
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