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SNOW ROSE
乙女の章
].Chorale(Ich freue mich in dir)
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えているヴィンマルク卿へと自らの名を明かしたのである。
「我が名はグロリア。原初の神に仕えし者、祈りを届けし者、星を測る者にして優しさを与えし者である。」
 女性の名を聞くや、その場にいた全ての者達が畏れおののき、皆その女性へとひれ伏した。
「我にひれ伏すなかれ!神を讃えし者等よ、原初の神へひれ伏すが善い!」
 その女性は紛れもなく、聖グロリアその方であった。白き衣を纏い、頭には十二の宝石をあしらったティアラを戴き、手には白き薔薇を持っていたのである。
「聖グロリアよ。何故、我等が前に姿をお見せ下さいましたか。」
 大司教が恐る恐る問うと、聖グロリアはいとも優しく微笑んでその問いに答えた。
「神を信ずる者よ、聞くが善い。最早この泉へと乙女を贄として捧げてはならん。神はそれを退けられたのである。これは乙女ラノンとの盟約により、神が決められし事柄なれ。」
 聖グロリアはそう言うや、手にしていた白き薔薇を泉へと落とすと大いなる奇跡を齎した。
 それを見たヴィンマルク卿ですら驚きのあまり、最早立っていることも儘ならない程であった。
 聖グロリアが泉へと落とした白き薔薇が浮かび上がってきたと思った時、それと共に無数の白薔薇が泉の底から浮かび上がってきたのである。
 それは見る間に泉を埋め尽くし、まるで花畑のように美しく幻想的な風景を創り上げたのであった。
 白薔薇の犇めくその中に、眠るように一人の女性が横たわっているのが解った。
「シュカッ!」
 皆はそれが誰か気付かなかったが、ただ一人、ハンスだけがそれをシュカだと解ったのであった。
 そのハンスの声に、聖グロリアは柔らかな笑みを湛えて言った。
「国を統べる者、神に選ばれし王よ。汝はこの者を愛しているか?」
「はい!」
 ハンスは即答した。
 考えることなどない。ハンスは国王としてでなく、聖グロリアに真実の心を素直に告げたのである。
 聖グロリアはハンスのこの返答を由とし、彼に向かって言った。
「汝をこの者の伴侶として是認しようぞ。この娘、泉の底にあってさえ、汝の幸福を神に願っておったのだ。」
 ハンスは聖グロリアの言葉に目を見開いた。
 聖グロリアはそのまま言葉を紡ぎ、付け足して言った。
「汝の幸福は乙女の内にあり。神とて、汝の幸福をこの娘なしには成し得ぬ。神は汝等を祝福するであろう。」
 そう言い終えた聖グロリアは、周囲の者等に顔を上げて預言を告げ始めた。

- 聞け、人よ。この者達の子の一人、その者の家より選ばれたる娘、神の祝福を受けん。娘は神の御手により高くされ、娘の愛した者と共にその名を聖別されるであろう。その証とし、神は白き薔薇を聖なる象徴として与えられん。
 時違え、この者達の子の一人、その者の家より出でし兄弟、神の名を忘れし時に光を射さん。祈りと
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