乙女の章
[.Bourree
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「ドリス。そこはもう少し強くして、次の節の三拍目から弱くするのよ。」
「えっと…こう?」
礼拝堂にフルートの音が響いている。ここで新しい乙女であるドリスを教えているのは、もう一人の乙女であるシュカであった。
ゲオルク神父亡き後、音楽は二人のシスターと二人の乙女によって、ほぼ毎日行われていた。週に二回は三人の神父も加わり、月の終わりには原初の神へ音楽を捧げているのであった。
「そうそう!楽譜にも書き込んでおいてね。」
そうシュカに言われたドリスは、早速羽ペンで指示を書き入れた。今ドリスが使っている楽譜はシュカが書き写したものであり、練習用としてドリスへ贈ったものである。
「じゃ、次は第三楽章へ移るけど大丈夫?」
「はい。ちゃんと予習もしてきたから大丈夫よ!」
横では二人のシスターが、優しく微笑みながら乙女達を見守っていた。
ゲオルク神父、ラノンと立て続けに去ってしまった後、シュカは随分と大人びてしまった。街で暮らす同世代の子供達とは比べられぬ程に責任感は強く、それでいて優しさと慈しみを湛えた女性へと変化していたのである。その上、神への祈りは人一倍熱心であり、自らの路を定めた決意が、彼女の瞳を強く輝かせていたのであった。
二人のシスターはそんなシュカを見て、時折こう思うことがあった。
“今のシュカであれば、王家に入ったとしても申し分無いであろう"と…。
しかし、それは有り得ない話しなのである。シュカは神に全てを差し出す乙女であり、彼女はそれを容認してここで修行をしているだから…。
だが反面、王からの書簡を受け取った時のシュカの顔が忘れられないのも事実である。
ヴェルナー神父から王の書簡を受け取った時の、シュカのあのはにかんだ微笑み…。誰が見ても、愛しい者からの書簡を受けた女性にしか見えなかったのである。
暫くすると、シュカから声が掛かった。
「シスター。お二方も楽器を持って来てくださいますか?」
二人が思いに耽っていた時、不意に呼ばれたので二人共ハッとなって顔を上げた。
「あ…ええ、分かったわ。」
シスター・ミュライはヴァイオリンを、シスター・アルテはヴィオラを持って乙女達へと歩み寄り、側の椅子へと腰を下ろした。
「ねぇ、シュカ。今日はどの曲をやるの?」
ドリスがシュカへと尋ねてきたので、シュカは微笑んで答えた。
「今日はグロリア・ソナタの第五番よ。四人だとこれしか演奏出来ないから…。この前練習したから覚えてるわね?」
「うん!」
シュカはドリスの返事を聞いて再び微笑み、それから二人のシスターへ「宜しいですか?」と問いかけた。二人のシスターも「大丈夫よ。」と返答したため、シュカはそのまま演奏に入ることにしたのであった。
シュカはクラヴィコードの前に座り、全員に合図を送って演奏を始
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