巻ノ七十六 治部の動きその六
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「どうしてもな」
「放っておけぬか」
「あ奴には昔からよくしてもらった」
友としてだ、そうしてもらったというのだ。
「だからな」
「見捨てられぬな」
「そうじゃ」
それ故にというのだ。
「わしはじゃ」
「そうするか」
「うむ、それではな」
こう話してだ、そしてだった。
大谷は病のこともあり暫く己の屋敷から出なくなった、だがそうしているうちに天下の情勢は動いていてだった。
三人の大老達が家康への詰問を決めた、それを受けてだ。
秀家は石田にだ、自ら言った。
「前田殿はお身体の調子が悪くな」
「内府殿の詰問には出られぬ」
「うむ、しかしな」
それでもというのだ。
「何かあればじゃ」
「それでもですか」
「うむ、覚悟を決められておる」
「戦をですか」
「そうじゃ」
だからというのだ。
「我等は一気にじゃ」
「攻めますか」
「内府殿を囲んでな」
「ですか、そしてですな」
「御主達五奉行にもな」
「場に出て」
「攻めてもらえるか」
「わかり申した」
石田は秀家に強い声で答えた。
「それでは」
「うむ、しかしな」
秀家もだ、こう石田に言うのだった。
「迂闊に出るな」
「話にですか」
「そうじゃ」
釘を差す様な言葉だった。
「時と場を見て言ってもらう」
「正しいことを言えば」
やはり石田はわかっていない、だが。
秀家はその石田にだ、あくまで言った。
「言ったぞ」
「ですが」
「わしは言った、よいな」
石田に多くは言わせずそうしてだった、秀家は彼に多くを言わせずそれで釘を差すのだった。だがそれでもだった。
秀家は石田に不安を感じていた、それで他の大老である輝元と景勝に言った。
「治部を止められる者がいませぬな」
「うむ、どうしてもな」
「出来るならな」
輝元と景勝も言う。
「あ奴を止められる者もな」
「参加させたいな」
「是非な」
「誰か」
「刑部ですが」
石田を止められる者となるとだ、秀家は大谷を挙げたが。
ここでだ、こう言ったのだった。
「ですがあの者は」
「病だからのう」
輝元が応えた。
「そのせいで五奉行にもなれなかったしな」
「はい、そして」
「今も屋敷から出られない」
「そうした状況ですから」
「だからな」
「あ奴を止められる者は」
「どうにも」
石田、彼についてはだ。
「場には連れて行けませぬ」
「それがどうなるか」
「しかしここは攻める時」
景勝はこのことを二人の同僚に言った。
「何としても」
「上杉殿の言われる通り」
「全くですな」
「そこがどうなるか」
まさにというのだ。
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