巻ノ七十六 治部の動きその二
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「わしもその時は出る」
「そうされますか」
「是非な、そしてじゃ」
さらに言う前田だった。
「いざという時はわしも覚悟を決める」
「では」
「その時は、ですか」
「又左殿も」
「さすれば」
「貴殿達も腹を括っていてもらいたい」
是非にというのだ。
「そうしてもらいたい」
「畏まりました」
最初に景勝が応えた。
「それでは」
「そうして頂けるか」
「天下の為に」
こう前田に約束した。
「是非共」
「ではな」
「無論それがしもです」
秀家もだった。
「その時は」
「頼むぞ」
「はい、必ずや」
「それがしも」
輝元も言う。
「お任せ下さい」
「他の家が立てばな」
「はい、さすればです」
「例え二百五十万石の徳川家でも」
「勝てますな」
「そうじゃ、出来る」
四人の大老が力を合わせればというのだ。
「だからな」
「さすれば」
四人の大老はこう話をした、だが。
前田は日増しに体調を崩していっていった、それで自然と外に出ることも少なくなっていった。それを見てだった。
石田はその秀家にだ、こう言うのだった。
「前田殿ですが」
「うむ、どうもな」
こう言うのだった。
「お身体が優れぬ」
「やはりそうですか」
「だからな」
それでというのだ。
「これからが心配じゃ」
「あの、まさか」
ここでまた言った石田だった。
「それがしも思っていましたが」
「お会いすればわかる、貴殿も」
「そういうことですか」
「そしてじゃ」
「前田殿に何かあれば」
「内府殿はさらにじゃ」
唯一自身と一人で対することが出来る彼がいなくなればというのだ。
「出られるぞ」
「そうなりますか」
「殿、ここはです」
ここでこれまで黙って場にいた島が己の主と秀家に言った。
「刺客を用いてです」
「内府殿をか」
「そうされては」
「それが通じる御仁か」
このことからだ、石田は島に問うた。
「あの御仁は」
「それは」
「そうじゃな」
「内府殿には優れた家臣の方が多いな」
「はい」
「そしてその中にはな」
「伊賀者、甲賀者とですか」
島も言う。
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