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真田十勇士
巻ノ七十六 治部の動きその一

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                 巻ノ七十六  治部の動き
 秀吉が死んですぐにだった、大老の一人である毛利輝元は苦い顔で他の元老である上杉景勝と宇喜多秀家に問うた。
「どう思われるか」
「今の状況ですな」
 景勝が厳しい顔で応えた。
「まさに」
「左様でござる」
 まさにとだ、輝元はその四角い顔で景勝に応じた。
「太閤様がお亡くなりになられたとはいえ」
「はい、どうもです」
「内府殿がですな」
 残る元老の一人である整った顔の若い男が応えた、宇喜多秀家である。
「あの御仁が」
「うむ、宇喜多殿も思われるか」
「はい、内府殿が」
「どうもな」
「おかしな動きを見せていますな」
「全く以て」
 こう言うのだった。
「まさかとは思いますが」
「そのまさかでありましょうな」
 景勝は秀家に言った。
「やはり」
「天下を、ですか」
「望まれていますな」
「では」
「うむ、それでは」
 輝元は景勝と秀家の二人に言った。
「我等は」
「左様ですな」
「ここは手を打って」
「そしてそのうえで」
「内府殿の動きを止める」
「そうしていきますか」
 大老三人で話してだ、それからだ。
 三人で今度は前田利家、家康に唯一対抗出来ると言っていい彼のところに行って四人で話をした。すると。
 前田もだ、三人に言った。
「わしもな」
「ですか、又左殿も」
「そう思われていましたか」
「太閤様がお亡くなりになられたとはいえ」
「内府殿の動きが妙じゃ」
 家康のそれがというのだ。
「だからな」
「今のうちにですな」
「手を打っておきますか」
「そして内府殿の動きを止める」
そうしていきますか」
「うむ」
 そうしようというのだ。
「今のうちにな」
「さすれば」
「ただ、一つ問題がある」
 前田はここで三人の大老、自分と同じ立場の者達に言った。
「五奉行の者達にも話すべきだが」
「治部殿ですか」
 石田と親しい秀家が応えた。
「あの御仁ですか」
「うむ、話をするにしてもな」
「治部殿は一本気な方故」
「それが過ぎる」
 このことを言うのだった、前田は。
「だからな」
「それで、ですな」
「うむ、空気を読まずに動いてじゃ」
「それで場を乱すと」
「それが気になる、だからな」
 それでというのだ。
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