110部分:弓と雷とその一
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弓と雷とその一
弓と雷と
「えらく奇妙な陣だな」
前方に展開している解放軍を見ながらフリージの将軍の一人ラルゴは呟いた。
「あえて飛兵や騎兵の多くを馬から降ろし中央部には兵種ごとに中規模の部隊で編成している。あれで我等のテルシオに対抗するつもりか」
同じくフリージの将リストが海保軍の中央部の歩兵部隊を見て首を傾げている。
「テルシオに対抗し得るのはテルシオのみ。それを知らぬわけではあるまいに」
バルダックも言った。
「しかも左右には剣と斧の騎兵のみだ。まさかカラコールを知らぬのか」
ブルックは呆れ返っている。
整然と組まれたフリージ軍の陣に対し解放軍のそれはモザイクだった。それがフリージの将軍達には奇妙に映ったのだ。
「シアルフィの者達は何を考えているのでしょう」
本陣で司令官の警護役アイヒマンが作戦参謀を務めるコーエンに尋ねた。
「解らぬ。あの様な陣は見た事が無い。シアルフィ軍は一体何を考えているのだ」
もしかすると我等を相手にする為の奇計かも知れませぬぞ」
参謀の一人フラウスが言った。
「だがどうやってだ?あの数ではテルシオの重厚な陣は破れぬぞ」
ウォルフが解放軍を指差しながら言った。
誰一人解放軍の意図が見えないままであった。総司令官であるイシュタルも解放軍の陣形を見て驚きを隠せなかった。
「また変わった陣ですね。あの様な陣は今まで見た事も聞いた事もありません」
アルスター城の戦いの時の黒い法衣に身を包んだイシュタルも配下の将兵達と同じく敵軍の真意を計りかねていた。
「ですが殿下、我等は兵力において優りテルシオとカラコールという二つの必勝戦法で挑んでおります。負ける道理はありません」
歩兵部隊の将軍達の筆頭でありテルシオの発案者でもあるムハマドが自信に満ちた声で言った。
「そうです。いかにシアルフィ軍が強かろうと我等の敵ではありません。御安心下さい」
左翼の騎兵を率いるオーヴァも言った。
「・・・・・・」
イシュタルは腕を組み解放軍の陣を見ながら暫し考え込んでいたが顔をムハマド達に向けた。
「有り難うございます。私は大切な事を忘れていました」
澄んだ、それでいて艶やかな笑みを浮かべている。
「総司令官である私が迷ってはいけませんね。それに私には貴方達の様に私を励ましてくれる人達がいるという事を」
「殿下・・・・・・。勿体無い御言葉」
その言葉に将軍達は思わず頭を垂れた。イシュタルが幼い頃より彼女の人となりを知る彼等はその言葉が本心より出ている事がよく解かったからだ。
「さあ攻撃を始めましょう。そして勝利を我等が手に収めるのです!」
「はっ!」
フリージの
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