暁 〜小説投稿サイト〜
ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
109部分:鏡を持つ少女その四
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

鏡を持つ少女その四

 老人は血が混ざったような赤紫の法衣とそれと同じ色のマントを羽織っていた。皺だらけの顔に異様な黒い眼は邪気に満ちている。どうやら邪眼と呼ばれるものらしい。それも左眼だけだ。右眼は無い。眼窟があるだけだった。しかもその左の瞳は二つある。異様な眼であった。
(・・・・・・・・・)
 サラはその老人を見て眉を顰めた。イシュトーはその老人を見たことがあった。確かユリウスの側にいた者だ。素性の知れぬ怪しげな人物だった。
(名は確かマンフロイ・・・・・・。ユリウス殿下の側近の一人だったな)
 もう一人は背の高い中年の女だった。黒く長い髪と黒い瞳を持っている。歳を感じさせるが整った顔立ちをしている。唇と長く伸ばした爪は紅く塗られている。鮮血の様な色のドレスを着、その上から黒い上着を着ている。
(母上・・・・・・!)
 彼女こそレンスターのブルーム王の妃にしてイシュトーとイシュタルの母ヒルダであった。先代ヴェルトマー公の妹の子として生まれ強力な魔力を持っていた。同時にその残虐さも知られていた。
 少し手違いをした女中を裸にし鞭打ったり焼印を胸に押し付けたりした。自分に吼えた犬は首から下を地に埋めそのまま餓死させた。
 王妃としてレンスターに赴いてからはレイドリック等を重用し苛酷な法と血生臭い刑罰を次々と発した。逆らう者は一族全員鋸引きとしたり獣の餌にした。自らはそれを眺め酒を飲み贅を尽くした食事に舌鼓を打ち悦に入っていた。イシュトーとイシュタルが国の統治に携わるようになるとそういった事は行われなくなったが密かに罪人を過酷なやり方で殺していた。
イシュタルがティニーを常に自らの手元に置いたのも彼女を怖れたからであった。その母が怪しげな老人と共に暗黒神の礼拝堂に入ってきたのである。何かある、イシュトーは思った。
「例の件はどうなったのじゃ?」
 ヒルダが低いが張りのある声で言った。
「はい、子供は全てミレトスの神殿に送りそれ以外の者や家畜共は全て始末しました」
 マンフロイが答えた。しわがれ何処か邪悪さを感じさせる声である。
「ホホホ、そうかえ。わらわも行きたかったのう」
「何を仰います。ラドスであれ程楽しまれたのではないですか」
「ラドス?ああの時かえ。楽しかったのう、串刺しは。だがそなたも随分楽しんでおったではないか」
「フォフォフォ、そうでしたかな」
「まったく人が悪いのう。まあ良いわ、お互い様じゃからのう。それにしても思う存分人を嬲り殺す楽しみを味わえるとはな。暗黒教団とはよいものじゃ」
「そうでございましょう。ですが暗黒神様が降臨なさればより素晴らしい宴が毎日開かれますぞ」
「ホホホホホ、嬉しいのう。そち達には感謝しているぞ」
「有り難き御言葉。では礼拝の後ヒルダ様に贈り物を献上いたしましょう」

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ