乙女の章
Z.Menuetto
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そこから一通の書簡も出てきた。
ハンスは封を開き書面に目を通して驚いた。
「シュカからではないか…!」
送り主は、ずっと待ち望んでいた人からだったのである。
内容はさして他愛もないものであったが、その後暫くの間、王ハンスの機嫌が非常に良かったと伝えられている。
さて、それから間も無くしてスティーヴンスの元に書簡が届けられた。送り主はヴェルナー神父であり、どうやら古文書が保管されていたようである。
直ぐに中を確認したが、そこには不可思議な事柄が記されていた。
実際は聖グロリア教会には全く関係ないのであるが、少なく見積もっても古文書自体が二百年近くも前のものとのことで、不明瞭な点が多いとヴェルナー神父の言葉が添えられていた。
-清く聖別されし大地に、白き薔薇咲き誇る時来れり。原初の神は女と男を一人づつ高くし、女には大地を、男には時を司らせんとす。時満ちて流れ行く音ありて、神はそれを善きものと定めたもう。然りて、幼き者その音と共に神に愛され、神は幼き二人を御下に呼び寄せ、彼の者らの名を高くしたもう。されど、音絶えし時、人々は神を忘れ争いを起こさん。-
これは古い時代の神父が、話しにあった教会の壁に彫られた文を書き取った一部である。
「なんともなぁ…。」
残念なことに、この古文書の大半は劣化しており、これ以上の解読は不可能とのことであった。
「預言…なんだろうか…?」
スティーヴンスは一人呟いたが、その答えは数百年先になるのである。
スティーヴンスはその書簡を机の引き出しの奥へと仕舞うと、そのまま席を立って私室を後にしたのであった。
この書簡はその後、誰の目にも触れることはなく、その秘密を明かすことなく役目を終えることとなる。
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