乙女の章
Z.Menuetto
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つの村へ泊まることになった。
その一つであるノービスの村で、スティーヴンスは不可思議な話を聞いた。
-‘トレーネの森には、旧き時代に建てられたもう一つの教会がある。そこには真実の聖文が刻まれ、それは歴史を変える…'-
この話しは、ノービスの村の長老の妻であるメリッサが話したものである。
このメリッサだが、五十年程前に滅んだヴェルヌ家の生き残りであった。
このヴェルヌ家は代々トレーネの森の一部を所有し、口伝により様々な事柄を伝えてきた。その一つが教会の話しなのである。
今迄聞いたこともない話しであり、信憑性に欠けることも否めないが、スティーヴンスは心に留め置くことにしたのであった。
「ゲオルク神父であったなら、何か知っていたかもな…。」
そう呟くと、秋の高い青空を背に馬を走らせた。もう一息でトレーネの森である。
そのトレーネの森へ行くには、大聖堂の街セレガに入らなくてはならない。厄介なのは司教達に見つかってしまうことであるが、この時は運良く司教達にも出会わずに森へと入ることが出来た。
森へ入って暫くするとスティーヴンスは馬から降り、近くの木へと繋いだのであった。
そこから先は、馬を入れることが許されていないからである。
スティーヴンスはそこから一時間程歩みを進め、やっとのことで聖グロリア教会へと辿り着いた。
「やはり、いつ見ても美しい教会だ。」
外の景色とはまるで違い、春のような淡い光に照された教会は、その純白の美しい姿を誇示していた。それは真っ白な花のようで、森の瑞々しい緑によく映えていた。
スティーヴンスはその様な景色の中、正門から中へと入り、そのまま神父達の執務室へと直行した。
「これはスティーヴンス殿、よくぞ参られた。」
中にはよく見知った二人の神父がいた。
一人はヴェルナー神父であり、もう一人はマッテゾン神父である。
もう一人、ゲオルク神父亡き後に着任したトマス神父は不在であり、どうやら乙女達の勉強をみているようであった。
「また、王からシュカ宛の書簡ですかな?」
苦笑いしながらマッテゾン神父が問ってきたので、スティーヴンスも苦笑しつつ答えた。
「はい、いつものように…。」
その返答を聞いたヴェルナー神父は嘆息し、ぼやくようにして言った。
「王にも困ったものだ…。手紙は確かにお渡しするが、シュカは運命を担う乙女なのですがな。本教会大司教に知れたら、王とてただでは済みますまいに…。」
解りきったことであるが、言わずにはいられないのがヴェルナー神父なのである。
そんなヴェルナー神父を見て苦笑しつつ、マッテゾン神父は突っ立ったままのスティーヴンスに椅子を勧め、自身はお茶を淹れに食堂へと出て行ったのであった。
「して、未だに諦め切れんと?君にも説得は難しいと言
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