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SNOW ROSE
乙女の章
Z.Menuetto
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がこの国に必要だと直感した。そして、私は彼女を…愛したのだ。」
「勘…みたいなものですね…。まぁ、いいです。兎に角、この書簡を届けに行きますので、王は謁見の用意を整えて下さい。では、これにて失礼致します。」
 馬耳東風だと分かると、スティーヴンスは王へ礼を取って部屋から出ていってしまったのであった。
 一人きりになった部屋の中、ハンスは静かに過去を振り返っていた。
 トレーネの森でゲオルク神父が亡くなってから、早五年の月日を経ていた。
 無論、乙女ラノンは泉へとその身を委ねている。ゲオルク神父の葬儀から三月後のことであったが、その詳細は知られていない。
 それを記した者がいなかったのである。
 乙女シュカが記した日記は現存しているものの、ラノンが聖所へ籠った時から後二月が空白になっているため、シュカはラノンの行く末を知っていたとも言われているが、それを立証するものは未だに見つかってはいない。
 ハンスは大聖堂でのことやトレーネの森での出来事を回想し、それから深く溜め息を吐いた。
「私には…彼女が必要だ。シュカ、君を消し去ることなんて…出来るわけがない…。」
 そのハンスの言葉がこの時代、どれ程の非難を浴びるかなど、王であるハンスは充分に理解していた。だが、どうしても譲れない願いというものは誰しにもあるものであろう。
 それが一介の民であろうと、そして玉座に就く王であろうと…。
 その後ハンスは席を立ち、午後の謁見を行うべく部屋を後にした。
 廊下に出ると、窓からは晩秋の柔らかい光が差し込み、移り行く季節を感じさせていた。
「もうすぐ冬…か…。」
 ハンスはそう一人呟き、少しの間廊下の窓から高い青空を眺め、そして謁見の間へと赴いたのであった。
 さて、一方のスティーヴンスは馬に乗り、王の書簡を届けるべく先を急いでいた。
 首都リヒテからトレーネの森までは、馬でも約二日かかってしまう。それ故、スティーヴンスはいつも書簡を届ける際、中途にあるツェルトと言う街で一泊し、トレーネの森へ書簡を届け終えた後には大聖堂のあるセレガの街で一泊する。そこからの帰途で再びツェルトで一泊することになる。
 今回も同様の道を想定していたものの、途中のツェルトへ向かう橋が崩落し、その架け直しの最中であったために遠回りしなくてはならなくなった。
「参ったなぁ…。」
 仕方なくスティーヴンスは一旦引き返してもう一方の分岐点まで戻ると、今度は他方の道に馬を走らせた。
 こちらの道は小さな村が五つ程ある旧道で、泊まることには不自由はないのであるが、ほぼ倍に時間を取られてしまうのであった。
「はぁ…キリエの村に入ったら王へ書簡を送らないとなぁ…。」
 馬上でスティーヴンスはぼやいた。
 結局トレーネの森へ着くまでに、キリエ、サン、ベネ、ノービスの四
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