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SNOW ROSE
乙女の章
X.Sonatina
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ハンナが止めるのを力ずくで撥ね除け、もう一人の乙女ラノンの所へと来ていた。
「リーゼ、何故ここへ…!?」
 ラノンには、もうリーゼに会うことは出来ないと告げられいた。遠い国へ行くのだと…。
 そのためラノンは大いに驚き、そして、リーゼに再び会えたことを喜んだ。
「ラノン。今だけ…今だけだから…。」
 リーゼはそう言うと、瞳に涙を溢れさせてラノンに抱きついた。
 そしてリーゼは…言ってはならぬことを口にしてしまったのである。
「私は…私は死んでしまうのよ。あの泉に…沈まなくてはならないの…!」
 このリーゼの言葉に、ラノンの心は凍りついた。
「…え…?」
 教会へと連れてこられてから七年。どうして自分が連れてこられたのかも知らぬままに日々を受領していたラノンにとって、それは正しく雷の言葉となって心に突き刺さった。
「なぜ…?なぜリーゼが死ななくては…?」
「私だけじゃないの…。あなたも…そして次の女の子も…。皆、あの泉へと沈むために…」
「嫌…!」
 ラノンはリーゼを強く抱き返していた。
 リーゼの言葉を聞いたラノンは、心の中で恐怖を覚えたのである。
 姉のようなリーゼが消え去る恐怖。そして、自らも同じ運命を定められている恐怖…。
 だが、その恐怖心とは逆に、神への愛も湧き出していた。だからラノンは、自分がいかにすれば良いのか分からず、ただただ…その場で泣き崩れる他なかった。
 そこへヴェルナー神父を筆頭に、ゲオルク神父、マッテゾン神父、そして二人のシスターが駆け付けて来た。
「何と言うことじゃ…!」
 始めに言葉を発したのは、ゲオルク神父であった。
 乙女達が涙を流しながら抱きあっているのを見て、ラノンが自らの行く末を知ったのだと解ったからだ。
 ゲオルク神父は直ちに二人の乙女へと歩み寄ったが、それを見たリーゼは顔を上げて言った。
「来ないで!」
 短い一言であったが、それはまるで研ぎ澄まされた刄のように、神父やシスター達の胸に深く突き刺さった。
 しかしその中でも、一番心を痛めていたのはシスター・ハンナである。
 彼女はずっと乙女リーゼの傍らで、彼女の成長を見続けてきた。教義とは言え、そんな彼女を泉の中へと一人で赴かせねばならないのを、いつも哀しく感じていたのである。
 原初の神を信奉してはいるものの、やはり人としての感情が先に立ってしまい、それがリーゼにも伝わっていたのかも知れないと思ったのであった。
 そしてシスター・ハンナは、誰もが予期せぬ行動に出たのである。
「私のせいです…。私が世俗的な思いを捨てきれないばかりに、リーゼはこの様な…。」
 確かにそれもあるであろうが、それらは神の決め事と言うもの。それはゲオルク神父もよく理解していた。
「シスター・ハンナ、何もあなただけのせいではない。
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